■2006世耕弘成
6月5日に自民党系のシンクタンクである「シンクタンク2005 日本」の開所式が、東京虎ノ門にある同シンクタンク事務所で挙行された。参加者20名程度のささやかな式典ではあったが、武部幹事長、中川政調会長が出席し、安倍官房長官からの祝電が披露され、多数のマスコミも取材に訪れるなど、日本の新しい政策立案手法確立への自民党の熱意と、世の中の注目度が感じられる開所式であった。
私はこれまで安倍晋三党改革実行本部長(当時)とともに、これからの自民党の政策立案は霞ヶ関依存型から脱却しなければ、諸外国との政策競争に勝てないし、霞ヶ関の縦割り構造では解決できない新しいタイプの政策課題に対応できないという思いで、設立に向け奔走してきた。一時は霞ヶ関に任せておけばいいではないかという党内の反対論や、お金がかかりすぎるのではないかという懸念が強く、設立断念寸前まで追い込まれたこともあったが、党内を説得し、何とかここまでこぎ着けることができ、感慨無量である。
このシンクタンクは新しいスタイルの政策立案に向けて早速実績を上げつつある。シンクタンクでは、ノーベル経済学賞を受賞した米ペンシルバニア大クライン教授をはじめ、内外超一流の経済学者に依頼して、「日本が今後3%程度の経済成長を持続することが可能かどうか」について、実際の経済モデルを走らせながら検証してもらった。そして、IT分野への投資を活性化すれば十分に可能であるとの研究結果を得た。日本はインターネットのインフラは十分に整備されているが、民間企業がそれを活用した新しいビジネスモデルを描けておらず、まだまだ潜在的な成長の可能性を秘めているとの結果であった。その研究成果を中川政調会長に報告して、党の経済成長戦略立案に大きな影響を与えた。
また、「小さな政府論」について、東京大学の久保文明教授をはじめとする専門家に研究してもらった。日本はなぜ小さな政府を目指さなくてはならないのか? という点を中心に検討してもらったわけだが、その過程で世界の大規模な財政改革の成功例、失敗例を分析した結果、成功した国は7割を歳出削減、3割を増税を含む歳入増で対応してきたという分析結果が出て、その結果が党でとりまとめた歳出歳入一体改革に反映された。
このような政策提言は霞ヶ関の省庁からは決して出てこない種類のものだ。今回、自民党系シンクタンクが自民党と一定の距離を保ちながら、外部の学者と政治家がコラボレーションしながら、経済成長と行政改革についてこのような提言を行い、それが自民党の政策決定に影響を与えたということは、まさに画期的な出来事である。今後も教育が経済成長に与える影響や少子化時代の社会福祉のあり方について、外部の頭脳を活用しながら提言をとりまとめ、自民党や政府の政策立案に反映していくことになるであろう。
(2006世耕弘成)
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