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f_ss_nikai.jpg 二階 俊博
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f_ss_sekou.jpg 世耕 弘成
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2008年01月22日

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科学技術立国への不安材料 子どもたちの理科離れをなくせ
5_5.gif ■2008西博義

 昨年の11月20日、 生物学の世界で画期的な研究が日米同時に発表された。
 ヒトの皮膚細胞からさまざまな臓器の細胞になりうる新型の万能細胞であるiPS細胞(人工多能性幹細胞)が作製されたのだ。
 同じように万能性のあるES細胞(胚性幹細胞)はヒトの受精卵を用いて作製するため、 倫理的に問題があり、 しかも他人の細胞なので拒絶反応など医療に応用する上で課題がある。
 それにひきかえ、 iPS細胞は自分の皮膚細胞を用いるため、 これらの諸課題をクリアでき、 限りない応用が期待される。
 ヒトiPS細胞を世界で初めて作った山中伸弥・京大教授は早くもノーベル賞の声がかかるが、 すでに幅広い分野で激しい応用研究が世界中で始まっている。
 政府は、 いち早く京都大学に、 山中教授を中心とした 「iPS細胞研究センター」 を整備し、 文部科学省・厚生労働省・経済産業省・特許庁が連携して、 来年度だけでも30億円以上を投入する。
 このように、 個別の研究成果に対して、 迅速に多額の予算をつけて支援することは異例のことであるが、 それだけ再生医療としての実用化への期待が高いのだ。
 科学技術立国をめざす日本の面目躍如といったところだが、 科学技術の将来には、 不安材料もある。 将来を担う日本の子どもたちの理科離れ問題である。
  『国際数学・理科教育動向調査』 という国際調査で、 「理科の勉強はたいへん楽しい」 と答えた生徒は19%(国際平均44%)で、 「理科を積極的に勉強」 は17%(国際平均57%)と、 日本の生徒は国際的にみて非常に低い数字を示している。
 昨年末に発表されたOECDの 『学習到達度調査』 では、 日本の15歳の生徒の科学に関する教育レベルは、 フィンランド、 香港、 カナダに続いて上位であり、 とくに、 科学的証拠を用いる問題には強い。 しかし、 科学的な問題を認識することや科学的に説明することには弱いという結果が出た。
 30歳の時点で科学に関係する仕事についていると予測した生徒はわずか8%(国際平均25%)で最も少ない。
 このように、 理科に対する成績は上位にもかかわらず、 興味や探究力、 意欲に乏しいのが気がかりである。
 戦後、 科学技術は、 めざましい成果をあげ、 私たちの生活も考えられないほど向上した。
 資源の乏しい日本が経済的に急速な成長を遂げたのは、 科学技術を基盤とする 「ものづくり」 において、 常に世界をリードする発展を続けてきたことが大きな要因であることは論をまたない。
 ますますグローバル化が進む世界で、 日本が繁栄を持続するためには、 次の世代を担う子どもたちの教育、 とりわけ理科に関する能力と関心の維持が欠かせない。
 来年度予算案では、 研究者や技術者などを学校へ派遣する理科支援員配置事業や自然に触れる機会を提供する農山漁村での体験学習の推進、 さらには、 未来の科学者養成講座の開設、 国際科学技術コンテストへの支援などが盛り込まれている。
 科学実験や自然体験などを通して、 子どもたちに科学技術の本来の面白さを見つけてほしいと考えている。


(2008西博義)
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