わかやま新報は、和歌山市を中心とする和歌山県北部唯一の日刊新聞です。
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2010年12月07日

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生産額ベースの自給率 抜本的農政政策見直しを
5_5.gif ■2010鶴保庸介


 TPP、 政治と金、 景気対策、 北朝鮮や中国問題と何も結論は出ないまま、 そして肝心の政権交代時の主要テーマである年金や公務員の削減、 地方分権にも方針すら示せず、 まさかの国会閉会です。 このどうしようもない民主党にどう向き合っていくのか、 これから正念場というところでしょうか。 しかし、 そうこうしている間にも時代は、 世界は確実に動いています。 リーマンショックから完全に立ち上がった欧米経済は次第に第三極との連携を模索するようになっています。 TPPもその一つですが、 いまや網の目のようにアジア各国が経済連携を模索し始めていますから、 もう我々は内向きな議論ばかりをしている暇はありません。

 加えて、 中国の不逞な行動を見るにつけ、 国の経済力というのは大きな意味を持ち始めました。 この議論は急ぎ進めねばなりません。

 そんな中、 日韓の政治経済の交流のために韓国を訪問することになりました。

 2日間の日程は早朝から昼食をはさんで5時過ぎまでびっしりとホテルの会議室。 その後は休憩してこれまたホテルで夜の晩さん会という、 なんとも色気のないものですが、 日韓の政、 官、 財界の代表がテーマと時間を絞って言いたいことを言い合う、 というのはとても興味深いものでした。

 特に韓国ではこの日曜日にアメリカとのFTA合意を発表したばかりであり、 経済連携が北朝鮮問題と並んでテーマの一つになっていました。 ご存知の通り、 韓国は総生産額の4割近くを輸出が占め、 貿易立国を目指しています。 しかし大統領が推進役となってはいるものの、 簡単にはことは運びません。 国内農林水産業分野からの反対はやはり我が国と同じように強いからです。 保護政策に手立てが少ない、 無防備に国を開くことは生活を破壊するということで野党は猛反発。 まして政権基盤の弱い日本で、 というところでしょうか。 しかし、 そこで注意せねばならないのは、 日本では戸別所得補償などその保護政策の中身が論外だということです。 やる気のある農家がいいものを作っても同じように戸別所得補償で報われるなら、 頑張ろうという気にはなりません。 土地さえ持っていれば補償してくれる。 これでは地主はより効率的に経営しようとする農家から、 貸しはがしを奨励しているようなものです。 一律の補償は流通が生産と分離した現状では補償の分だけ値下げを強要される圧力がかかります。 そして、 これらのことは現実に起きています。 減反や補償など、 未来永劫このままのビジネスモデルが継続するはずはありません。
 また何より、 国会的財政逼迫の折にそのような政策がこれからも続くと期待している若年農家は少ないと思いますし、 だからこそ、 継続的な農業後継者づくりには寄与していないと考えるべきです。ここらで抜本的な農政政策の見直しが必要なのではないでしょうか。

 それにはまず農政の目的を考えるべきだと思います。 農業政策の目的は農業従事者の生活をまもり、 その農地を守ることを通じてコミュニティーを守ることであったはずですが、 いつの間にか、 穀物農家を、 畜産農家を守るための政策になってしまっています。 農家と農地を守るためには作物が何であれよかったはずです。 にも拘わらず、 なぜ穀物なのか、 なぜ畜産なのかは明確な説明もされてきませんでした。 唯一の理由は、 食糧自給率を上げるために進められてきた農業政策、 ということになるでしょう。 しかし、 自給率はカロリーベースで考える限り穀物や畜産農家を保護することから脱却できません。 言い換えれば、 わが和歌山県のいや国全体の耕作地の減少に歯止めをかけることはできないのです。

 梅干しやミカンやカスミソウなどはカロリー計算、 とは縁遠いものですから。

 これからはカロリーベース自給率を上げることを農政の中心に据えるのではなく、 より競争力のあるものを育て導く作業に注力すべきだと思うのです。 生産額ベースの自給率を上げることを考えなければなりません。

 そうすればわが和歌山県の中心的生産物である果樹や花卉、 野菜にも多くの政策の恩恵が当たるのです。 そして、 「とりあえず」 先代から継いできた農地だから、 という農家にも、 本気で農業に取り組んでもらうインセンティブを与える。

 カロリーベースの自給率は我が国では当たり前のように使われてきましたが、 世界的には稀です。 世界中のカロリー自給率計算をわざわざ日本の農水省が計算しているという指摘すらあります。 そんな実態であることを一体どれくらいの日本人が知っているでしょうか。

 わが県も米作りが中心でした。 しかし、 園芸農業を始めたのはそれが、 儲かる、 あるいはより進んだ農業である、 との先人の努力があったからではないでしょうか。

 土地改良や加工技術の進歩と相まって、 長らく農業県であったこれらの蓄積を自ら貶める必要はないと思うのです。 輸出のために、 マーケティングのためには十分すぎる補助をつける。 通訳や旅費や情報交流、 運送費への補助があってもいいでしょう。 それらの専門業者の立ち上げには障壁を少なくして、 作ることと売ることが直結するようにするのです。 和歌山の産品には十分に成算はあります。

 ただし、 政府はこれらのことを全くいわないままTPPに突っ込もうとしています。

 韓国も野党は反対しています。 しかし、 ここまでひどい与党だとは韓国も想定していないのではないでしょうか。 そのことを会議で水を向けると空を仰いでいたのは印象的でした。


(2010鶴保庸介)
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