和歌山軌道線廃止から40年 現存する広島の路面電車の今

京都市交通局から移籍した1900形電車。今もなお、広島の街で活躍する(広島市中区東千田町で次田尚弘撮影)

 和歌山から広島へ移り住み3カ月がたち、 いくぶん広島の街に慣れてきた。 通勤や営業のため、広島電鉄という路面電車を利用するのだが、 これがたいへん便利である。

 同社は大正元年(1912)開業、 広島市中心部から広島駅、 広島港、宮島方面へと多数の路線を有している。 市内線は1乗車150円均一で、運行本数も多い。 市民からは手軽な乗り物として親しまれ、 中心市街地に人の流れ(人流)をもたらしている。

 昭和40年ごろからは、大阪、京都、神戸、福岡、北九州で不要となった路面電車を多数受け入れ、現在も運用されている。

 和歌山軌道線(昭和46年廃止)と同様、 広島においてもモータリゼーションの進展で路面電車の廃止が検討されたという。 しかし、関係者によるヨーロッパへの調査団派遣など、 渋滞緩和策として活用される新しい路面電車のありように気付き、存続が決まったという。 現在は駅のバリアフリー化や、 低床車両の導入など、LRT(次世代型路面電車システム)化を推進。 更なる進化を遂げている。

 LRT化は国土交通省が導入支援を行い、 現代における環境負荷の軽減や交通事情の円滑化、 移動のバリアフリー化、 都市内交通の利便性向上など、地域活性化に影響を与える施策。広島は40年前にその必然性に気付き、現代まで路面電車による交通網を維持してきた、 交通まちづくりの先駆けの都市といえる。

 人口や街の構造、観光資源や社会的事情は異なるが、かつては路面電車が存在し、現在、中心市街地活性化が課題の和歌山にとって、学ぶべき事例であることは確かだ。    (次田尚弘/広島)


2011年07月04日 16:56