2008年08月15日

2008 04.文化・くらし

異国の少女に我が子をみる 上海でユダヤ人が日本兵と写した写真

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3歳のステインさんと日本兵が写った写真

日本兵に優しく抱き上げられている異国の幼い少女。 イギリス・ブライトン在住のユダヤ人女性、ルース・ステインさん (72) が3歳のとき、 1940年の上海で写してもらったものだ。写真の裏には 「大日本和歌山市手平金 保田実」(字が消えかけていることから「久保田」ともとれる)と記されており、優しく抱き上げている日本兵は、 和歌山出身と思われる。 「この人には、 祖国に自分と同じ年ごろの娘がいて、とても優しく接してくれた」。 ステインさんは、 生きていれば100歳近くになると思われるこの男性に「本人でなくても、 家族にこの写真を渡したい」 と行方を捜している。

ことし5月23日、映画「ふるさとをください」の試写会がイギリスで開かれ、それを見たステインさんの友人でイギリス在住の近藤盛子さん(55)が、映画の舞台が和歌山だと知り、同映画プロデューサーの中橋真紀人さんに写真の件を相談。
近藤さんは「ステインさんのお父さんは、ナチスに逮捕され、おじいさんとおばあさんはガス室に送られて殺されました。母親とステインさんは、1938年になんとか逃れて上海に来て、狭い部屋で過酷な生活を強いられたようです」と話す。
当時、日本軍の統治下にあった上海で、日本兵と、同盟国のドイツから虐殺を逃れてきたユダヤ人の女の子が一緒に写った大戦下の一枚の写真。そこに、どんなドラマが隠されていたか知るすべはないが、日本兵の優しいまなざしには、同盟国も敵国もなく、人間の温かさは不変だという事実が写されている。
ステインさんは「この男性は日本に当時の私と同じくらいのお子さんを残していて、とても恋しがっていましたよ。上海の日本人の方たちは、1人を除いてとても優しくていい人ばかりでしたね」と振り返り、写真を手に取っては「男性のお友達が写されて、 それを現像して分けてくれました。この人も同じ写真を持っているかどうか分かりませんが、もし持ってないのでしたら、何とか複製してお送りしたいのです」と目をやる。
近藤さんは「写真の中で男性がうれしそうにステインさんを抱きかかえていらっしゃいますが、お顔が優しそうで、とてもいい表情をしておられます。ご自分の子どもさんのことを思い出し、本当にステインさんのことがかわいかったのだと思います」と話している。
◇ ◇
記されていた手平金という地名は和歌山市にはない。ただ、この一枚の写真が68年の時を超えてステインさんの願い通り、彼か、その家族のもとに届けられる事を祈りたい。写真に心当たりのある方は、弊社までご連絡下さい。
(編集部)





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