2008年08月19日

2008 04.文化・くらし

紀三井寺 前田副住職に聞く[2]

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「生かされていることに気付くことで本当の人生が始まる」と前田副住職

前回はお盆の由来やその功徳、そしてインドの六道輪廻の話しなどから、肉体は滅んでも魂は生き続け、善く生きた人は魂を浄め高めた功徳で良き世界に生まれ変わるとお話していただきました。では善き世界に生まれ変わるには「日々どのように心がけていくことが大切なのか」などを今回お話していただきます。

肉体は滅んでも魂は生き続け、善く生きると善き世界に生まれ変われるということですが、では仏教は、日々どのような心がけで暮らすことが大切と教えているのですか?
前田 私たちは、生計を立てるために働いたり、家族の面倒をみるために毎日さまざまな4w1hに囲まれて暮らしています。誰が(who)、いつ(when)、どこで(where)、何を(what)、どうする(how)にせかされて生きているのです。ですがこうした私たちの人生の根底には、自分はどこから来て、死後どこへ行くのか(WHERE)、いつ旅立つのか(WHEN)、何をするために生まれてきたのか(WHAT)、どのように生きればいいのか(HOW)そして、私は一体誰なのか(WHO)という大きな4W1Hが横たわっているのです。これらはどれも、なかなか答えの出せない難問ばかりですが、忙しさにかまけて目をそむけていると、行き当たりばったりの「その日暮らし」に終始して、薄っぺらな人生を送ることとなります。
具体的には、どうするのですか。
前田 この世には無駄なものは何一つありません。私たち一人ひとりの人生も、何か意味があって生かされていることにまず、気付く必要があります。
その日から、目先の損得にとらわれない、本当の人生が始まります。このように生きる人は、自分への反省を忘れません。「自分探し」、自分の生きる意味は何か、についていつも考えているからです。彼はまた、他人への感謝と神仏への祈りを忘れません。生かされている自分を「生かす」のは誰なのかを知っているからです。
今は殺伐とした世の中といわれることも多いですが、原因はなんでしょうか?
前田 「殺伐」という言葉を広辞苑で引くと「雰囲気にうるおいがなく、荒々しいこと」とあります。親は家庭の中のうるおいを、社長は会社の中のうるおいを、政治家は国の中のうるおいとは何かについていつも考える必要があります。うるおいの有る所には、自殺も、親殺し・子殺しも、通り魔も無いはずです。日本は確かに豊かな国なのですが、この「うるおい」はお金では買えないのです。
親の子どもへの教育も昔とは違うのでしょうか?
前田 お釈迦様が2600年前にこうおっしゃってます(『六方礼経』)。「親が子どもの身につけさせるべきは職業、財産、伴侶、善悪、信仰など」。はじめの3つ、職業と財産と結婚相手は目に見えるものです。一般の親は、この3つを施そうと頑張ります。ですが、後者の2つ、善悪と信仰を伝えなかったがために、子どもが結局すべてを台無しにしてしまうことがあります。教育の大事なところは今も昔も変わりません。うるおいについて考える、子どもに善悪を伝える、これらもすべて大きな4W1Hについて考えることと無縁ではありません。
この問答が、あなたの人生を深め、本当の幸せとは何かについて考えるきっかけになれば幸せです。





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