2008年10月01日

2008 04.文化・くらし

我が家はフィールドオブドリームス

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「自然素材の見事な活用と遊び心、桟や格子の造形美、それらを通して入ってくる光の柔らかさ...。昔の人の知恵と美意識は素晴らしい」

和歌山市和歌浦、雲蓋山のふもとに、昭和25年に建てられた数寄屋風の民家がある。数年前、荒れ果てていたこの家と出合った多井忠嗣さん(42)が心惹かれて購入、家を甦らせた。「庭のある伝統的日本家屋で、しかも万葉の時代から人々に愛された和歌浦での暮らし。日々自然と歴史と文化と繋がっていることは喜び」と話す多井さんの連載『紅蕙山房記』が8日から始まる(隔週)。多井さんに住まいとの出合いなどを聞いた。

家はもともと隠居用の離れとして建てられたもの。20年ほど空き家だっため庭には草木が鬱蒼と茂り、屋根も壁も傷んでいた。いずれ取り壊されるか自然に倒壊するのを待つばかりの状態だったという。しかし、古い家を探していた多井さんにとって、茶室前の大きなモミジと長い廊下、部屋が独立していること、何よりも和歌浦の地にあることが決め手になった。
屋根瓦を葺き替えてもらい、家族総出で障子を張り替えた。改修は少しずつ手を加えて1年がかり(現在も補修中とか)。母屋と渡り廊下で繋がっていたため存在しなかった玄関は、同級生に設計してもらった。
大学で建築史を学び、現在は社寺の修復などに携わっている多井さんは、「古民家というほど古くもないし、大きな梁や高価な銘木も使われていない」と話すが、『別冊太陽 古民家再生術2』で紹介されたこともある。そしてその時の編集者の言葉「(取材した家で共通して感じたのは)建物自体の価値以上に、それらの特質を見抜き、歴史を刻んだ建物との生活を想像する力」が印象に残っているという。
さらに民家の庭というごく身近な場所で、人知れず姿を現しては消えていく貴重な自然の営み...。日本の植物分類学の父・牧野富太郎博士に憧れていたという多井さんは、この庭を「新たな発見に溢れたフィールド・オブ・ドリームス」と目を輝かせる。
奥さんの由紀さん(41)も、「ここでの暮らしは、竹の子、潮干狩り、海水浴、アート・キューブや寺社での催し、和歌祭...と四季を通して楽しめます。子どもたちも楽しんでいるようです。そして、私のひそかな楽しみは、台所にリスが訪れること」と話す。
『紅蕙山房記』の隷書体の題字はその由紀さん(雅号・雪華)によるもの。『紅蕙山房記』の名の由来は? 来週のコラムで。





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