2008年10月15日

2008 04.文化・くらし

漆の魅力を空間に

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藤をイメージしたニッチの前で

「漆の魅力を空間に生かしたい」とことし2月、会社「Office hashimoto」を東京都内に設立した。業務は厳選した日本産漆を用いたインテリアの企画・製造・販売。壁面や家具に特化した漆による空間演出の提案だ。
施主の意向を理解し、設計会社と綿密に打ち合わせて構想を練り、全国から選りすぐった職人とチームを構成し制作する。そしてこのほど、大きな初仕事を終えた。
その仕事とは、千代田区永田町の高層ビルに新事務所を開く著名な総合法律事務所のエントランス。現代的でシャープな空間に、幅1.8mのニッチと、長さ4.2mのカウンターを任された。
「相談に来る人が希望を感じてくれるように」と、ニッチには温かく奥深い朱を使用。物語性を持たせたいと、「牛島の藤」をモチーフに、曙光の中で藤の花房が揺れるイメージをプラチナ箔のラインと金箔で表現した。
カウンターのモチーフは「宇宙」。深みのある黒漆に青漆や金箔を散らし、刷毛目で進む光を表した。「この上で字を書いてもいいのですか」と驚かれたが、良質の漆を重ねたものはとても強く、肌触りが穏やかという。
目指すものが一つ形になった今、「東京では、漆のようなこだわりのものを取り入れることで、空間しいては会社のサービスや会社自体の価値を上げるという需要があると実感しました」と話す。
漆器製造卸業を営む家に生まれた。大学卒業後、実家の業務に携わり塗りや蒔絵などの伝統技術を学びながら経営を意識。起業家を育てる東京の施設でスタッフとして働き戦略を学んだ。「初めは腫れました」と苦笑いしながら、漆産地岩手でのうるし掻きも実習。「職人の仕事を増やしたい」との思いも募った。
「器にとどまらない、漆の新たな可能性を」「新市場開拓を」と、多分野ネットワーク「プラスウルシプロジェクト」を立ち上げたのが昨年。会社設立、そして初仕事はまさにその延長線上にある。
「自然の恵みと職人の技から生まれた漆の個性を大切にここだけの空間をつくりたい」。
漆への思いとチャレンジ精神、事業への信念は、華奢な外見からは想像できないほど熱く強い。





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