2008年12月09日

2008 04.文化・くらし

世界的ピアニスト梯さん

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阿弥陀様の前で透明感あふれる演奏をする梯さん

生後間もなく小児がんで両方の目の視力を失うが、幾多の困難を乗り越え今や世界的なピアニストとして国内外で活躍している梯(かけはし)剛之さん。このほど、和歌山市の護念寺の開創500年記念のお十夜法要で阿弥陀様の前で行った演奏は、水﨑仰祉住職が「お念仏の代わりに梯さんのピアノを」との思いで約7年来の願いがかなったもの。本堂内は透明感溢れる限りなく優しい音色に包まれ、約300人の聴衆は心温まる感動のひとときを過ごした。梯さんの音楽に対する思いなどを伺った。

お寺で演奏された感想は?
以前、二条城で演奏しましたが、お寺は初めて。前日の練習の時から神聖な空間の中で、阿弥陀様に見守られた感じがしました。ぼくは証明できないこと、「息吹」や阿弥陀様の「魂」とかを信じているので。一つの大きな宇宙と僕の演奏と作曲家の思いとが一体となった瞬間気持ちがぐっと入っていきます。どれ一つ欠けても違っていくし、全部が一体となって初めてお伝えするものを感じます。

音楽をするきっかけは
生まれてすぐ小児がんで失明して、それから日々痛くて辛い治療や検査をしてきました。暴れて激しく泣く子で大人への警戒心が強かったです。これから命が助かるのか全く先のことが分からず、生死の瀬戸際で音楽を聴いていました。ぼくは赤ちゃんのころから歌のレコードやピアノを聞けばどんなに泣いていてもピタッと泣きやんで、いろんな音楽を吸い取るように育ってきました。13歳の時に2回目の目のがんを患いましたが、音楽を聴いていると不安が全くなかった。そこでまた先に行く力となり、元気になれば社会にお返ししたいと18歳で思いました。

これまで困難を乗り越えた原動力は?
あきらめないことです。困難に遭った時はいつも何かを探していけば何かを見つけられるという信念がありました。母も努力していくと必ず道が開けていくという信念で導いてくれ、それを教えてもらいました。

音楽を続けることができたのは?
必ず道が開けるという信念と、赤ちゃんの時から音楽を空気のように聞いて育ち音楽が好きなことなど、いろんな意味で原動力につながっています。いろんな本も読みます。(住んでいる)近くにはシューベルトやベートーベンが散歩した道や家があり、そこにいると作曲家たちの伝説がつい昨日のように伝わってきます。

今後一番やりたいことは
今、全国の小学校と特別支援学校含めて2万4千校に無料で僕のDVDを贈らせていただいています。小学校は普通の学校に行っていろんな友人との思い出があり音楽に救われたので、「いやだな」「つらい」と思った時に聴いてもらって元気になってくれたり、音楽を好きになってくれたらと思います。(「子供に伝えるクラシック」2006年モーツァルト、08年シューベルト、第3作はベートーベン)。





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