2010年05月20日

00.社会

県内は6件すべて実刑判決、裁判員裁判1年経過


国民が刑事裁判に参加することで、 司法への理解を深めてもらおうと裁判員制度が平成21年5月21日に導入されて1年が経過した。 県内初の裁判員裁判は21年9月16日から18日に行われ、 住居侵入・強盗殺人の罪で、 全国初の無期懲役の判決を下した。 この1年間、 裁判員が裁いた事件6件についてすべて量刑が争点となった。その主なものを振り返る。

「死体が隣にあってどう生活をしていたんですか」 「被害者が別の人と一緒だったら、 殺していましたか」 。 県内で初めて行われた裁判員裁判では、 裁判員それぞれの感覚で生じた素朴な疑問が被告に投げ掛けられた。 自宅に放火したとして、 現住建造物等放火の罪に問われた男の裁判では、 男の両親に対し 「日々対話して被告を管理すると言いましたが、 具体性に欠けませんか」 といった質問など、 被告や証人の発言内容のあいまいさにするどく切り込む発言が目立った。

まだ記憶に新しいのは、 強制わいせつ致傷、 公然わいせつの罪に問われた男が裁かれた事件。 県内初の性犯罪を扱った裁判員裁判で、 被告に対し交際相手とのかかわり方など、 女性裁判員が女性の視点に立った指摘など感情のこもった質問が積極的にあった。

導入後から21日までの1年間で裁判員を経験したのは、 県内で36人、 補充裁判員は12人。 裁判員の選任手続きについては質問内容などは公開されていないが、 女性と男性の割合では男性が多い。

また、 和歌山地裁によると、 県内初の裁判員裁判では、 約40の傍聴席を求め数百人が並び抽選が行われ、 約6倍の倍率となったという。 抽選は2例目まで行われ、 3例目以降は、 法廷前で先着順に傍聴券を配布する方法に切り替えたといい、 住民の関心が薄まりつつある背景も見え隠れする。

和歌山弁護士会刑事問題対策委員会委員長の畑純一弁護士は、 この1年間を振り返り 「放火や強制わいせつ致傷など、 今までの傾向では執行猶予が取れるべき事件が実刑になっている」 と述べ、 「裁判員裁判は基本的に3日間。 審理自体はほとんど2日目のみとなり、 裁判員が素人感覚で、 その時間だけ被告と向き合っただけで果たして正しい量刑を決められるのか」 と話した。

同地裁では今後、 強盗致傷、 殺人、 強制わいせつ致傷の3件の裁判員裁判が予定されている。





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