2010年06月24日

00.社会

全盲の写真家大平さんが和歌山に

全盲の写真家、 大平啓朗さん

山下さん夫婦に寄せられたメッセージを見せ旅を振り返る大平さん右

障害者の生の姿を見て知ってもらおうと、 デジタルカメラを片手に全国を一人で旅する全盲の写真家、 大平啓朗さん(31)=北海道函館市=が23日、 47都道府県の最終地として和歌山を訪れた。 一般の家庭で宿泊させてもらうことにこだわった旅に大平さんは 「どれもが楽しい出会いだった。 いろんな人とのつながりを感じ、 今後の活動に生かしていきたい」 と1年間を振り返った。

大平さんは山形大の大学院1年生だった24歳のころ、 メタノールの誤飲で光を失った。 子どものころから写真が好きで、 2009年6月、 全国47都道府県をめぐる旅に出ることを決意。 写真を通じた人との触れ合いの旅が始まった。

「ごはんはどのようにして食べるのか」 「家の中ではどう過ごすのか」。 「目の見えない人は暗闇の世界にいる」という誤解からくるイメージを払拭しようと、 これまで宿泊はすべて一般の家庭。和歌山では加太の会社員、山下政利さん (58)宅を訪れ、妻の初美さん(57)と、 これまでの旅の思い出話に花を咲かせた。 旅先で出会った人からのメッセージが詰まったアルバム4冊を広げ、一つ一つについて、エピソードを話した。

大平さんは音やにおい、温度や光、風など、 「四感」で感じ取るままにシャッターを切る。たとえ被写体の半分が切れていても自分の作品に変わりはないといい「構図とかバランスとかがよければ、俺が撮る意味がないでしょ」と笑う。旅の途中にはスキューバダイビングやスカイダイビングも体験。写真と共に感じたことを音声で記録するなど、その時の空気や感情も残してきた。

「これはまだ序論に過ぎない」と大平さん。 今後は、 函館市で現在進めている障害のある人もそうでない人も自由に集える場所づくりなど、 障害のある人が置いてけぼりにならない社会をつくる活動に力を入れる。 旅でつながったネットワークを生かし、「次は全国の祭りの写真を撮りたい」と意欲をみせる。
出会う人たちとお互いに与え合う関係をつくる「ギブギブ」 の旅はまだまだ続きそうだ。





この記事と関連がありそうな過去の記事

powered by weblio


00.社会 - 同カテゴリの記事






カテゴリー
社会
事件・事故
政治・経済
スポーツ
文化・くらし
紀の川・岩出・海南・紀美野

これまでの特集
月別アーカイブ
株式会社 和歌山新報社
cypress.gif