2010年07月10日

00.社会

平和への思い新たに、和歌山市で戦没者追悼法要

和歌山市戦没者追悼法要

あの悲劇を忘れてはいけない。65年前の和歌山大空襲での戦災死者を慰霊する法要や、平和を願う講演などが9日、和歌山市内で開かれた。参加者は大空襲で亡くなった人の魂に黙とうを捧げ、恒久平和への思いを新たにした。大空襲は、昭和20年7月9日深夜から10日未明にかけて、米軍のB29が市中心部に焼夷弾を投下し、約1400人が亡くなったとされている。

和歌山市戦災死者追悼法要 火災による熱風のため避難した748人が犠牲になったと言われる汀公園(西汀丁)戦災死者供養塔前でしめやかに法要が営まれた。この日は雨模様となったが、遺族や小学生ら約200人が出席。大空襲で亡くなった1400人の魂に黙とうを捧げ平和への思いを新たにした。

法要では、遺族会の八木良三理事長(83)が「目を閉じれば逃げまどう人々の凄惨な光景が浮かぶ。惨劇を繰り返さない努力を続けたい」と式辞。市立伏虎、和大付属の両中学校、八幡台小学校の子どもたちは千羽鶴を奉納。伏虎中1年の津村幸一君(12)は「戦争で罪のない人々が死んだのが悔しい。戦争はする必要がない。二度と(戦争を)しないと誓います」と涙を流しながらメッセージを読んだ。

また、平和学習の一環で戦争について学んでいる和大付属小6年生38人の代表5人が「戦争があったことを未来に伝えなければならない」「世界中が平和になってほしい」などと平和への願いを述べた。

出席した中澤朋子さん(78)は「焼夷弾は家を焼くだけでなく、人がいるところに雨のように降ってきた。竜巻が起こって飛ばされる人もいた。母や同級生もここで亡くなった。7月9日のことは絶対に忘れることはないけれど、思い出したくはない」と話していた。

平和を希(ねが)う念仏者の集い 和歌山市鷺森の鷺森別院で第17回「平和を希う念仏者の集い―全戦没者追悼法要―」が開かれ、オウム真理教のドキュメンタリー映画を監督した作家の森達也さん(56)が「世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい」と題して講演した。森さんは戦争が起こる理由について、メディアの影響力の大きさや人の心の弱さを挙げ、「戦争は人の悪意が起こすのではない。善意や正義が起こすものだ」と、人間の優しい心を間違った方向に向けてはいけないと訴えた。

講演には250人が参加。森さんは「人の悪意によって起こった戦争は第2次世界大戦以降、ほとんどない」とし、その多くはメディアによって不安や恐怖を煽られ団結した人々が、愛する人や国を守るために起こしたものだと説明。事件や事故を大きく報道し、人々の不安を煽るのがメディアの「宿命」としながら、「メディアは第一戦犯だ」とも言い放った。

森さんは「サリン事件や同時多発テロをきっかけに、他人に対する不安と恐怖は増大した」「インターネットの登場でメディアがより大きくなり、いつ戦争が起きてもおかしくない状況になってきている」と危機感を示し、情報に踊らされない強い意識を持つことの大切さを語りかけた。

中橋地蔵尊 市内を流れる内堀川には多くのやけどを負った被災者が、水を求めて飛び込み命を落とした。

戦没者の霊を弔うための地蔵が祭られた中橋地蔵尊(同市福町)では、高野山金剛講和歌山地方本部『正寿講(しょうじゅこう)』のメンバー9人が、御詠歌を唱えた。同メンバーの高瀬春子さん(67)によると、「祖母が現在の城北公園内にあった寺を一人で守っている時に空襲に遭った」といい、「お地蔵様の道しるべで生き延びたと聞いた」と地蔵に感謝し手を合わせた。空襲を経験したメンバーらは「熱風がすごくて、一面焼け野原だった。ビルなどもなかったから、みんな真っ赤に火傷していた」と沈痛な表情で語った。





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