2010年10月20日

00.社会

息子を交通事故で亡くした母親が手記

小島さんの母親と何度も手紙でやりとりした谷本さん

小島さんの母親と何度も手紙でやりとりした谷本さん

「多くの人に知ってもらいたい。 生きたくても生きられなかった命があることを」 。 平成21年6月、 和歌山市内の小学校へ教育実習に向かおうとしていた、 和歌山大学教育学部3回生、 小島達也さん(当時20歳)が大型フォークリフトにはねられ死亡した。 小島さんの母親が思いをつづった手記が、 和歌山北署(和歌山市松江北)の交通課カウンターで事故の悲痛さを訴えている。

小島さんは事故当日、 教育実習で授業を行う予定だった。 午前7時30分ごろ、 和歌山市内を原付で走っていた小島さんにフォークリフトのフォーク部分がぶつかった。 脳挫傷、 頭蓋骨骨折などを負い、 重体となった。 教育実習に行った学校の児童や同級生からの 「頑張れ」 と書かれた寄せ書きに囲まれつつも9日後、 息を引き取った。

手記には 「どんなに泣いても、 叫んでも、 息子はもう二度と帰ってきません」 「もっと一杯甘えてくれたらよかったのに」 など母親の悲痛な思いが赤裸につづられている。 加害者の男性は、 大型特殊自動車の免許を持っておらず、 道路交通法違反 (無免許)、 自動車損害賠償保障違反など4つの罪に問われたが、 21年10月、 和歌山地裁で懲役3年、 執行猶予5年の判決が出た。 母親らは執行猶予を不服として、 同大学などで署名を集め、 控訴を求めたところ、 ことし3月の控訴審で、 加害者は自動車運転過失致死の罪などで懲役2年の実刑判決となった。

北署交通課の谷本貢交通捜査係長 (56) は、 事故当時から遺族を見守ってきた。 控訴審の判決が出た際、 谷本さんは母親に裁判の報告をしようと、 小島さんの故郷の愛知県を訪れた。 「若者の事故をなくしたい」。 小島さんが息を引き取るまでの経過を知り、同じ年ごろの子どもがいる谷本さんは強く思うようになっていた。 そして、 母親に持ち掛けた。 「お母さん、 落ち着いたら、 手記を書いて送ってくれませんか」。

ことし8月末、 谷本さんのもとへ母親から手記が届いた。 谷本さんは 「手記にもありますが、 お母さんは 『また愛知に帰って来たら聞けるから』 と、 大学生活についてほとんど知らなかったんです。 小島さんには 『教師になりたい』 という夢があった。 痛ましい事故が、 少しでも減ってほしい」 と話している。

手記は、 和歌山北署交通課のカウンターに置かれており、 自由に見ることができる。 問い合わせは同署(TEL073・453・0110)へ。





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