2011年02月15日

00.社会/観光学部一期生卒業へ

和歌山大学観光学部一期生卒業へ②

「人を動かす」にはどうすればいいかを学ぶ観光学。さまざまな体験を通し、学生たちはその基本となる「ホスピタリティー」や高いコミュニケーション能力が磨かれた。それを示す最たるものが、卒業予定者の就職内定率だ。

卒業見込者70人のうち民間企業希望者53人全員が内定し、就職内定率は100%。就職先はJR関係5人、ホテル業3人、保険・金融業10人などのほか、公務員試験には4人が合格している。全国的に大学生の就職難が叫ばれ、さらに女子学生が8割近くを占める同学部にとっては厳しい状況での健闘に、大橋昭一学部長は「こんな学部は全国にもないはず。日本一だ」と胸を張る。

同学部キャリアセンターでは「一期生ということもあり学生たちはチャレンジ精神豊か。幅広く学んだ高い企画・マーケティング力が評価されたのでは。広い視野で業界を絞り込まないよう就職活動を進めたこともよかった」と分析。学生を採用したロイヤルパインズ(株)の採用担当者は、「専門的な知識はもちろん、それが経済に与える効果など発展性のある意見があった。インターンシップ体験からの学びの目線があり、期待する部分は大きい」と評価している。

一方で地域再生が求められる和歌山での就職内定者数は13人(うち民間企業12人)。和歌山には学生を受け入れる企業、学生の能力を生かせる仕事が少ないことも背景にある。観光学部で学んだ学生には、他地域へ流出せず県の振興に尽力してほしいと地元の期待も高まるが、学部の特質上それぞれ自分の育ったまちに戻り、地域に尽くしたいと願う地元志向の学生が多い。

そのため公務員にこだわる傾向も強いが、それもかなりの狭き門。大橋学部長は、観光を学んでも、優秀な人材が観光分野に送り出されることが難しい状況にあるのも大きな課題と指摘する。日本経団連によると、全国で観光系学部・学科を設置している大学の卒業生の観光関係分野への就職は23%。同学部も、2割弱とみている。

全国的には、平成16年度から20年度の5年間で18の都道府県が観光専門の部・局・課を設置するなど、観光部門の組織体制を強化。自治体に観光振興局などの特別ポストの設置を求める声もある。

受け皿の拡充も課題に残るが、高い就職率は、観光業のみにとらわれず幅広い視野を持ち合わせた同学部生の「人間力」が証明された結果といえる。大橋学部長は、春に社会人としての第一歩を踏み出す一期生に「観光学部の学生たちの総合力は抜群。時には自分を抑えて相手を立てる心も大切に、社会や周囲に認められる人望の厚い人になってほしい」とエールを送っている。





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