2011年02月18日

00.社会/04.文化・くらし

県文化功労賞、能楽師・松井彬さん

喜多流能楽師松井彬さん

けいこ場で舞う松井さん

和歌山市東高松の喜多流能楽師松井彬さん (64) は50年近く能楽一筋に歩み、 県内、 国内での演能はもちろん、 海外での公演やワークショップ、 講義を続け、 訪れた国は約90におよぶ。 今回の受賞について「途中であきらめずに続けてきたことへの1つのプレゼントと思う。 ありがたいです。 死ぬまで続けます」 と話す。

昭和21年和歌山市生まれ。 6歳から和島富太郎氏に能を学び、 34年喜多流宗家喜多実氏の内弟子となり、 42年に独立して喜松会を発足した。 県内では 「けんぶん能」 や 「市民能」、 「日前宮薪能」 や 「和歌の浦万葉薪能」 などに出演。 東京や大阪の能楽堂でも定期的に公演している。

平成10年に文化庁の重要無形文化財総合指定を受け、 20年に和歌山市文化賞、 和歌山からのカナダ移民の悲哀と望郷の念を表現した新作英語能 「かもめ」 で、 内村直也賞を受賞した。

松井さんは 「古典、 伝統としての能楽は決して崩してはいけない。 基本が大事」 とする一方で、 新たな可能性を求めバリ舞踊との共演など、 異分野とのコラボレーションにも積極的に挑戦。 先月はアルゼンチンでタンゴと共演してきた。

「能を分かってもらうための、 うそではない、 一つの方便」 という。 舞踊や演劇の要素がある能は、 オペラにも何にでもなる。 その国の要素を取り入れることで、 海外の人にも入りやすくなると思うからだ。

しかし心配なのは、 日本人が日本の文化を忘れてしまっていること。 「能だけでなく茶道や華道もそう。 能が壊れるのじゃなく日本が壊れる気がする。 教えると外国人の方がマナーがいいですよ」 と憂う。

ことしもヨーロッパ公演などを予定しており、 和歌山市では4月8日に源氏物語を題材にフラメンコと共演する。 「能は総合芸術ですから多くの方々の助けが必要です。 県もスポーツだけでなく、 もっと文化に力を入れていただきたいですね」 と松井さん。

けいこ場には、 20代の終わりに揮毫 (きごう) してもらったという額 「努力」 が掲げてあった。
◇ ◇
本年度県文化表彰受賞者から和歌山市の1人、 1団体を紹介する。





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