2011年05月11日

00.社会/04.文化・くらし

復興への願い詰め 震災乗り越えた重箱展示

復興への願い詰め 震災乗り越えた重箱展示

輝きを取り戻した重箱と蘇理さん

阪神淡路大震災を乗り越え、和歌山で美しくよみがえった重箱が、「東日本大震災の復興への願いを詰め、希望を重ねて」と和歌山市吹上の県立博物館で展示されている。出品者は、16年前の大震災の際、神戸市東灘区に住んでいた県教委文化遺産課副主査の蘇理剛志さん(34)。全壊した家のがれきの中から取り出された重箱は、2年前に黒江の漆器職人の手で輝きを取り戻し、今も蘇理家の正月の食宅を彩っている。

平成7年1月17日、高校3年生だった蘇理さんは自宅で被災し、アルバムやわずかの品々をがれきの中から取り上げたものの、多くの思い出の品を失った。重箱もすでに60年以上使われていたため傷みが激しかったが、「家族の思い出が詰まった大切なもの。捨てるに忍びない」と、ラップを敷くなどして正月に使い続けていた。

民俗文化財が専門の蘇理さんが和歌山県に就職したのは同19年。以前からの知人が漆芸を学んでいたため重箱の修復を依頼すると、海南市の漆器職人・谷岡公美子さん(昨年、伝統工芸士認定)が修復してくれることになった。

谷岡さんは、部材はほとんどそのままに、漆をはがして傷んだ部分を補修し、外側に黒漆、内側に朱漆を丁寧に塗り重ねた。そこに谷岡さんの師匠の沈金(ちんきん)師・久世清吾さん(伝統工芸士、県名匠)が松竹梅と鶴亀の絵を豪快に加飾。2年近くかけた素晴らしい出来栄えに家族は大喜びしたという。

蘇理さんは、「震災以前のものには思い入れがあります。しかも和歌山の方々が協力してくれた修復の過程は、震災から14年の復興の過程であり、笑顔で語り継げる我が家の新しい物語です。その思いの一端を感じていただけたら」と話し、「今被災されている方には、長い時間をかけても立ち直り、乗り越えてもらいたい」と願っている。

展示場所は、「モノ」とモノにまつわる個人の「思い出」を展示する同館1階のマイミュージアムギャラリー。6月19日まで。観覧は無料。問い合わせは同館(TEL073・436・8670)。





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