2011年05月24日

04.文化・くらし

版画家・吉田政次の世界展、近代美術館

サンパウロ・ビエンナーレ出品作「相対性絵画」シリーズ

サンパウロ・ビエンナーレ出品作「相対性絵画」シリーズ

ことし没後40年となる有田川町出身の版画家・吉田政次(よしだ・まさじ、 1917~1971) の画業をたどる 「吉田政次の世界展」 が、 和歌山市吹上の県立近代美術館で開かれている。 昭和28年の《静》から44年の《青春の輝きNo2》までの木版画36点を展示。 吉田の求めた静かで秩序ある平和な作品世界が紹介されている。

吉田は大正6年生まれ。 東京美術学校 (現・東京芸術大学) 西洋画科を卒業した昭和16年に太平洋戦争が始まり従軍。 中国で右足を負傷し、 日本に帰還したのは21年だった。 同館の奥村泰彦学芸員は、 「静かで平和な世界を求めたのは、 戦争を体験したことが大きかったと思う」と話す。

23年ごろから木版による制作を始め、 第1回モダンアート展やルガノ国際版画展など国内外の版画展に出品。 「緻密な技術に基づいた内省的な表現」 は高く評価され、 32年に第1回東京国際版画ビエンナーレ展で新人賞を、 44年には第8回ジョアン・ミロ賞国際素描展大賞を受賞する。 しかし同年に入院し46年に死去。 享年54だった。

会場には、 平行に細かく彫り進めた線の連なりが面になり、 微妙な濃淡や色調の変化を作り出す《哀愁の日》や《空間》シリーズの作品。 日本代表としてサンパウロ・ビエンナーレに出品した、 面の組み合わせが面白い《相対性絵画》シリーズ。 秩序だっていながら活気溢れる《躍動する心》《流行と女性》などの高度成長期の作品が並び、 奥村学芸員は、 「吉田の抽象表現の展開が見てもらえると思います」 と話している。

同展は 「コレクション展2011―春」 のコーナー展。 昭和48年の遺作展以来の規模となる。 また没後30年になる和歌山市出身の洋画家、 和田傳太郎の作品も紹介されている。 6月12日まで。
問い合わせは同館 (TEL073・436・8690)。





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