2011年06月02日

00.社会/06.特集/私達にできること―和歌山から東日本へ―

被災地での活動報告 臨床心理士の上野さん

和歌山県臨床心理士会

子どもの心のケアについて話す上野さん

東日本大震災被災地の子どもの心のケアをしようと、県臨床心理士会(桑原義登会長)は岩手県宮古市へメンバーを派遣している。 岩手県教委から日本臨床心理士会を通して協力要請があり、各都道府県の臨床心理士が被災地で支援に当たっている。 県派遣チームの責任者、上野和久さん(57)は 「子どもが元気になれば大人にも伝わる。 和歌山でも大地震の発生が予想されているが、早い段階で心のケアを取り入れるのは大切なこと」 と話している。

県臨床心理士会には現在、 県内外の臨床心理士122人が所属。 派遣を希望した6人がチームとなり、 交代で一人約5日間ずつ滞在している。 宮古市内の小中校で子どもの様子を観察しながら、 体を緩めるリラクゼーションや、 絵を描かせて気持ちを発散させるなど、 震災で受けた心のストレスを緩和する方法を教えている。

県の派遣チームは、 教職員や子どもに親しみを持ってもらおうと、 メンバーの顔写真と自己紹介を書いた資料を事前に用意。 派遣されたメンバーは、 その日の活動内容をチームに報告し、 継続した心のケアを心掛けている。

公立高校の教諭として30年のキャリアがある上野さんは、 5月17日から20日まで派遣された。 小学校2校、 中学校2校を訪れ、 アニメのウサギの指人形を使ってコミュニケーションを図った。 ほかの臨床心理士もお茶の道具を持っていくなど、 得意分野の切り札で心をつなごうと努力しているという。

上野さんによると、 避難してきた子どもも打ち解けて仲良くしているといい、 「余震が続く中、 子どもたちは無理して頑張っているように見受けられた。 気が張っていますね」。 また教職員の疲れが見て取れたといい、 「 『自分が子どもを守らないと』 と気負い、 自分も被災者である意識がなくなっているように思う」 と話す。 子どもに教えるリラクゼーションを一緒にすることで、 指導する教職員にも好影響があるという。

現在、 子どもたちにPTSD(心的外傷後ストレス障害)などの症状は見られないが、 今後、 津波の影響で、 潮や泥、 重油のにおいなどの刺激で震災を思い出すことが考えられるといい、 「 『子どもたちには被災の体験がある』 ということを忘れずに教育してほしい」 と要望する。

一方で和歌山でも、 被災地へボランティア活動へ出向いた人が、 臨床心理士の事務所に通うケースも出てきており、 上野さんは 「他府県では、 被災地支援をした人の二次受傷を防ぐために心のケアのシステムが整っているところもある。 各地方自治体でも組織的に取り組んでもらえたら」 と話している。





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