|
|
会場からの質問に答える(左から)牧村さん、恩田さん、梶川さん |
文豪・夏目漱石(1867~1916)の来和100周年記念シンポジウムが14日、和歌山市の和歌の浦アート・キューブで開かれた。明治44年(1911)8月15日に、漱石が県議会議事堂(現在の根来寺一乗閣)で行った講演「現代日本の開化」をめぐり、3人の漱石研究者が発表。230人が熱心に聴き入り質問した。主催は和歌山漱石の会、後援は県立文書館。
同講演は、日本の近代化は外発的で上滑りだとする優れた文明批評だが、講演終了後に聴衆が静まり返るなど、異例で不明な点が多い講演として知られる。
『新聞記者夏目漱石』などの著書がある朝日新聞東京本社記者の牧村健一郎さん(60)は、「(同講演は)漱石の講演の中でもベスト1。今読んでも新しい発見がある」とし、「漱石は、皆を喜ばせるようなものではなく、立ち止まって受け入れなければならない苦い真実を語った」と話した。
また、漱石が和歌山を講演先に希望した理由として、同会主宰で天満天神繁昌亭支配人の恩田雅和さん(61)は「大逆事件」を、県立向陽高校教諭の梶川哲司さん(59)は和歌浦にあった日本初の屋外用エレベーターの存在を挙げた。
恩田さんは、「大逆事件で死刑を含む6人の逮捕者を出した和歌山の人たちに、明治政府への痛烈な批判を聞いてほしかった」とし、梶川さんは「機械力による文明開化にネガティブな関心があった」と語った。
大連での講演との関わりや、『三四郎』自筆原稿から分かったことなども披露され、会場は熱気でいっぱい。同市五番丁の谷脇登基子さん(86)は、「漱石の気持ちがよく分かり、いいシンポジウムでした」と話した。
またこの日は、県立文書館主任の溝端佳則さん(51)が、100年前の絵はがきで構成したパネル「漱石が見た和歌山」と、初公開となるエレベーターを描いたびょうぶを展示。参加者は、溝端さんの解説を聞きながら漱石の道順をパネルでたどり楽しんだ。
|
04.文化・くらし - 同カテゴリの記事
|