気温が高まってきた。じっとりと服がまとわりつく感覚に、昨年の夏を思い出す。
和歌山市園部で行われた、カレー事件の慰霊祭の取材。
普段は見かけないような記者やカメラマンもたくさんいて面食らった記憶がある。
そしてなにより、人が亡くなった事件について、どんな態度で何を聞いたらいいのか、苦悩したのを覚えている。毎年毎年、この季節に現れる報道陣にきっと嫌気がさしているだろう。そう思うと、声をかけようとする第一歩がものすごく重く感じた。
今日、ついに林真須美被告に死刑判決が下った。
被害者の一人である女性宅で、ニュース速報を見た。彼女に向けられる何台ものカメラ。速報を見てもいつもの表情と変わらず、「なんでこんなことになったんやろね」。彼女の愛犬のラブラドールが気持ちを察してか、そばに寄り添うように寝そべっている姿が印象的だった。
ことしで11年目。私と同い年だった女性も亡くなった。町の人々が楽しみにしていた夏祭り。みんなに食べてもらおうと、住民が協力して作った愛情のこもったカレー。とある住民の「せっかく作ってもらったからって、我慢して吐かんと耐えた人が亡くなったんよ」という言葉が胸にささった。
林被告はいまだえん罪を訴え続けている。何が本当で、何がうそなのか。それすらわからなくなってしまったのか。
真実は一つしかない。