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2009年05月07日
男たちのダメさが哀愁を「バーン・アフター・リーディング」


銀幕への招待状 web版 vol6

090507burnafterreading.jpg コーエン兄弟の新作は、前作「ノーカントリー」とは対極のブラックなコメディ。ジョン・マルコヴィッチがクビになったアル中のCIA局員。ジョージ・クルーニーがセックス中毒の連邦保安官。ブラッド・ピットがアイ・ポッドを手放せない気の弱いジムのトレーナー。何かに依存しなければ生きられない男たちが、CIAの機密(?)が入ったCDをめぐって右往左往する。そのドタバタ劇がとんでもない方向に転がりだして‥。
 まずは、それぞれの関係性が面白い。マルコヴィッチの妻である女医はクルーニーとダブル不倫中。またブラピの同僚はこれまたクルーニーと不倫交際中。男たちはそんなつながりがあるとは気づかずに自らの欲望のままに走り出し最悪の結果を生む。
 それに対して女たちのたくましさには頭が下がる。女医はマルコヴィッチとの離婚を着々と仕掛け、クルーニーの妻もまた密かに離婚を画策と男たちの狂想ぶりを横目で見つつ冷静そのものだ。中でもブラピの同僚を演じるフランシス・マクドーマンドの怪演が光る。全身整形の費用欲しさにCDをネタにマルコヴィッチを脅迫、またそれが空振りに終わるやロシア大使館に売り込む強引さ。その手先となって動くブラピのなさけないダメ男ぶりとは対照的だ。ちなみにマクドーマンドは監督のジョエル・コーエンの妻でもありコーエン兄弟作品の常連。中年のおばちゃんのたくましさと健気さが同居するキャラを、まさに体を張って演じている。
 自己中心の脳天気な連中が乱舞する狂想曲。そのジグゾーパズルの一コマ一コマが、すべて組み合わさって綴られる全力疾走のエンタテインメント。思わせぶりな伏線なんてまったく無いけれど、最後の1枚のコマをはめ込んだときニヤリと出来る面白さだ。
 正直言って好き嫌いがはっきりとする映画だと思う。どこまでもハードボイルドな「ノーカントリー」でコーエン兄弟のファンになった人にはついていけないかもしれない。だけど、犯罪をベースにブラックな笑いを散りばめるのはコーエン映画の真骨頂。ぜひぜひごらんいただきたい。上映時間が1時間40分と最近の映画にしてはコンパクトなのも好ましい。


2009年05月07日 19:45


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