安倍晴明といえば家紋の五芒星。龍神村には星神社と呼ばれる神社があり、地域の人々の信仰を集めている。
山奥の谷に造られた社殿は深く歴史を刻んでおり、森そのものを祀った自然信仰を物語っている。林立する杉の古木が美しい。静かに手を合わせた。龍神村の三ツ又・竜頭地区にある神社。正式名称は「三ツ又星神」という。
土台前面に大きな切り株と修理跡(石垣の白い部分)が見て取れる。かつてはここに、神社の土台にめり込む姿で杉の巨木が生えていたらしい。直径は約2メートル、この古木は星神杉として数百年の歴史を奏でていたのだが、明治42年(1909)神社合併に反対した氏子に、腹いせに切り倒されてしまったんだそうだ。なんとパワフルな。物静かで優しい山の男も怒らせると怖いのである。
現場で我々はその杉が例えば三つ又になって生えていて地区名になったんじゃないか、とか勝手に想像を膨らませていたのだが、当時の写真などは残っておらず、今となってはそれを確認するすべは無い。
まあなんせ「龍神村」の「三ツ又」しかも「竜頭地区」にあるもんで、昭和40年代生まれのボーイズはコレしか想像できまい。
はいドーン。キングギドラ。モノノケ退治の宿敵なら役者十分。ここ龍神には刀鍛冶がいて、彼が作る剣すなわち「りゅうじんのつるぎ」だ、と、ここまで付いて来れたアナタは立派なディープスポットハンターである。
それはさておき。
龍神村史によると、現在の御神体は農業を象徴する杵(槌の子)であるが、元々は「鎧兜に身を固めた古武士立像」と「弓矢を持ち亀に乗った武士像」の2体だったらしい。そのうち「古武士立像」については「紀伊続風土記」に「古く此の地に遁かれ来た人の産土神として祭りありたり」と記されていることから平安の頃この地に落ち延びてきた高貴な武人であると見られ、古来中国の28星座の中の「氐(テイ)星」を象徴した守護の星神「亀に乗った武士」と合わせて祀り、長い歴史を経ることにより、三ツ又の星神を厄除けの神として昇華させたものと解説されている(龍神村史下巻p.126)。すなわち「村の鎮守様」といった風情が大いにあり、晴明伝説にこじつけるのはちょっと苦しいかもしれない。
だがしかし。日本国内に意味の無い地名など絶対に存在しないのである。
この2像は現在、皆瀬神社に奉納されているとの事。
屋根には「皇」の文字が担がれており、「皇」の字が転じて「星」になったという[i]隊員説も面白い。それはそれで、また意味深な気もするが。