よく見れば、ロングヘアの後頭部は薄くなっている。少したるみかけた体も年月を経たいい味を出している。「あんたらの価値は30年間やり続けたことだけさ」。プロデューサーの言葉は、彼らへの最高のほめ言葉だ。
80年代初頭、へヴィ・メタルの旗手として多くのバンドから目標とされたバンド「アンヴィル」。その時代の一瞬の輝きだけを胸に30年間やり続けた男たちのドキュメンタリーに心打たれた。副題の通り「夢を諦めきれない男たち」に明日はあるのか?
今は地元のライブハウスで熱狂的な、しかし少数のファンを相手にライブを続けるアンヴィルに、久しぶりのヨーローパツアーのチャンスが来る。しかしギャラの未払いでライブスのオーナーとケンカしたり、1万人収容の会場でわずか170人の客などさんざんなツアーに。これまた久しぶりのレコーディングでは、お互いの意地の張り合いで解散寸前に追い詰められる。しかし、30年間の友情は固い。再び前へ進んでいく。
映画は、彼らを支える家族の姿も映し出す。普段は給食センターで働くヴォーカルのスティーブは、子どもにとっては「かっこいい」父親だ。結成以来の盟友ロブは無職だが、妻にとっていつでもロッカーとして輝く存在。いつもヒーローであり続けるのもまた、30年間解散せずにやり続けたからに違いない。
かっこ悪いことがかっこいい。このドキュメンタリーを見終わって考える。人生において「成功」も「失敗」もない。 好きなことをやり続けるエネルギーが未来をつくる。