「WDSRさん、ボクめちゃ怖いスポット知ってますよっ」
調査部のドアを叩いたのは、編集部岩出市方面担当の[憲]記者だ。
「怖いスポットってどこの何よ」
「山の中の鳥居を夜、車のヘッドライトで照らすと、恐ろしい顔が浮かび上がるんですよ!」
調査部はオカルトは扱わないとあれほど言っているのに、[憲]記者のこの「どや顔」は一体。
「岩出の若者の間では肝試しスポットとして超有名です。自分の車を手に入れて、夜、横に女の子を乗せたら、誰もがまず訪れる場所といっても過言ではないでしょう!誰でも知ってると思います」
真面目が売り物の[憲]記者のことだ、偽りでも盛り過ぎでもあるまい。試しに他の岩出市在住スタッフに尋ねてみても、「うむ、確かに行った事がある」とのこと。まあいいや、一度行ってみようか。しかし季節外れすぎやしませんかこのネタ。
場所は岩出市から広域農道に入り東進、根来寺から緑化センター、近大を過ぎてしばらくいったところにある春日神社だ。旧打田町中三谷に位置する。根来方面から行くと右手に大きな鳥居が見える。
実はこの神社、800年近い歴史を誇る由緒正しき神社なのだが、大鳥居と本殿の間を広域農道が横切るという、なんともまあ不遇な扱いを受けてしまっている。従って道から見える鳥居は裏側なのである。
社名額は道路とは反対側に付けられている。
道路を挟んで鳥居とは反対側に続く参道。きれいに整備されていて、春には桜の名所に。
参道を進むとすぐうっそうとした杜に。一の鳥居が道路の向こうになってしまったため、昭和50年に新しく建てられた朱塗りの鳥居。高さ8メートル。
戦の神、勝運の神として今も参拝客は絶えない。社殿背後の春日山には、豊臣秀吉の根来攻めに対抗した僧兵の城・春日山城址がある。
話を元に戻そう。[憲]記者によると、夜、涙を流す女のおぞましい顔が浮き上がるのは、最初に見える大鳥居の左の足元とのこと。ほぼ道路に面しており、暗く奥まっているわけでもない。
「夜、ヘッドライトでこの鳥居を照らすと、世にも恐ろしい顔が浮かび上がるんですよ、そう、ここらへんです」
手で指し示す[憲]記者。
「ああ、以前より風化が進んでいるかも。今は見えないかもしれない。ほらほら、ここらへんなんですが。だいたい、ここらへんです。恐ろしいんですよ、車のヘッドライトに照らされて見えると」。
君を信用していないわけではないが、微妙だぞ[憲]記者。
「鳥居のでこぼこの影が顔に見える」この話は、その時の前フリとノリ、そして横に座っている女の子がカワユイことが重要だ。そして、あわよくば、という下心の隠し味。全てが揃ってこそ、そこに涙を流すおぞましき女の顔が、情念のほむらのごとく立ち上がるのである。
「いや僕が見たときはホンマ怖かったです。追いかけられているように感じたんです。まじです。まじやばいって」。[憲]記者の目にはやはり嘘いつわりは見えないのである。
最後に、[憲]記者の名誉のために、彼が見たという涙を流す女のおぞましき顔をスーパーCG処理で再現しておきます。まあ確かに怖いが。
「ゴジラ」シリーズに登場した正義のロボット、ジェット・ジャガーに見える的な。というかジェット・ジャガーの造形は夜見ると結構怖いんじゃねえかって話。つうか女じゃねえし。
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