「遅い、鈍い、心がない」 行政サービス特例法案で痛感

西 博義

 先週の11日で、東日本大震災が起きてから5カ月が過ぎた。死者・行方不明者が約2万500人、避難者がいまだに8万7千人を数える。

 千年に一度といわれる圧倒的な規模の被害をもたらした地震、津波に加えて、原子力事故による放射能災害という、我が国が経験したことのない三重苦の災害に見舞われた。

 政権担当経験の少ない民主党・菅政権は、その対処になすすべを知らず、いたずらに時が過ぎゆき、被災された方の不満は頂点に達している。

 被災地では、がれきの処理、仮設住宅の建設、街づくりは依然として進まず、放射線への不安から、夏休み中に福島県から県外に転校を予定している小中学生が千人を超すという状況である。

 被災者の思いをよそに、民主党はこのままでは次の選挙に負ける恐怖心からか、菅総理を降ろして、新たな顔で再出発を図るのに誰がいいかと、現在、党内は右往左往、一種のお祭り騒ぎとなっている。

 さて、7月22日、「行政サービス特例法案」が内閣から提出された。

 自治体の行政サービスは、住民票のある自治体で受けるのが原則である。

 この法案は、原発事故による災害によって他の市町村に避難を余儀なくされた住民に対し、住民票を移動しなくとも避難先の市町村で行政サービスを受けられるようにする特例を定めるものである。

 法案の提出は、震災後すでに、4カ月を過ぎており、いささか遅きに失している。しかも、政府案では、国が強制的に避難させた避難者のみ責任を持つという考え方で、原発事故の避難者だけ対象としていることは理解できない。

 公明党総務部会でも、「同じ町に、原発事故で福島から避難してきた人と、津波で家を流されて岩手から避難してきた人との間で、差を設けるなんて考えられない」との発言があり、全員が「その通りだ」と心から賛同した。

 早速、公明党単独で、地震・津波の避難者にも適用するという修正案を作成した。まず、自民党に働きかけてご理解いただいた。ついで、民主党と交渉したが、内閣提出法案で良いとする立場を崩さず交渉は難航した。最終的には、民主・自民・公明の三党で協議することとなった。

 協議の結果、被災者目線に立った公明党の考えが取り入れられ、地震・津波の避難者にも事務処理の特例を適用する修正を行うことで合意した。

 衆議院総務委員会では、この修正案は全会一致で賛成されたが、当然の結果である。修正された法律案は8月2日衆議院、5日参議院を通過、成立した。

 東日本大震災に対する民主党の対応について、わが党の山口代表は「遅い、鈍い、心がない」と言っているが、まさにその通りだと痛感する。

 国民の生命と財産を守ることが、国の最大の務めである。現政権がその務めを果たさないならば、一刻も早く政権交代を求めなければならない時が来たと感ずる。

 まして、子ども手当、高速道路の無料化など主要なマニフェストが破綻 (はたん) した民主党による政権に国民の支持はないと確信する。

 いかなる政治状況になるにせよ、東北の皆さんの笑顔が見えるまで、引き続き、大震災の復旧復興対策をリードし、全力を尽くす決意である。

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