小山譽城さん『徳川将軍家と紀伊徳川家』出版

 和歌山市太田の小山譽城(こやま・よしき)さん(60)が、 『徳川将軍家と紀伊徳川家』 を清文堂から出版した。 紀伊徳川家と将軍(幕府)や高野山との関係、 紀州藩の支配の実態、 家臣団の特徴と地士(じし)制度の存在意義などについて論考したもので、 國學院大學文学部の根岸茂夫教授は 「逸話もふんだんに取り入れて読みやすく (中略)、 研究者だけでなく、 歴史に興味を持つ多くの方々、 教育に携わる方々にもぜひ推薦したい一冊」 と言葉を寄せている。

 小山さんは歴史学博士で県立陵雲高校教諭、 和歌山大学非常勤講師。 同書は 『徳川御三家付家老の研究』 (清文堂出版、 2006年) に続く2冊目の著書になる。

 内容は、 歴代藩主の参勤交代の実態▽頼宣の母・養珠院の出自と日蓮宗▽吉宗の母・浄円院の出自の謎▽紀州藩の宗門改め▽家臣団形成過程▽大名に昇格した紀州藩士など。

 頼宣にかわいがられ家老に出世した牧野長虎が、 頼宣に陰謀の疑いがあると幕府に提訴した事件▽続いて起こった由比正雪による幕府転覆の陰謀事件 (慶安の変) と頼宣の関係▽安政期の幕政の黒幕ともいわれる紀伊徳川家付家老水野忠央と将軍継嗣問題▽幕末・維新期における紀州藩の政争など数々の事件も取り上げている。

 根岸教授は 「江戸幕府・紀州藩双方の研究にとっても、 互いのアプローチが必要であり、 その間を結んだ研究として本書は貴重」 と評価。 「在地土豪が取り立てられて半農半士となった地士が、 幕末に海防や動乱の出兵に動員され翻弄 (ほんろう) されていく様相など、 多様な問題を取り上げている」 「人物に関する描写も興味深い」 としている。

 小山さんはあとがきで、 安藤精一和歌山大学名誉教授をはじめとする多くの研究者、 史料所蔵者に感謝し、 「これまで続けてきた研究の一区切りとしてまとめたものであり、 今後とも残された課題に向かって一歩一歩研究活動を続けていくつもりです」 と記している。


 2011年6月10日初版発行 著者・小山譽城 発行所・清文堂出版㈱ A5判 338㌻ 定価・7500円+税

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