年末恒例の孤立から支え合いへ 絆を取り戻す社会保障改革

西 博義

 行事となった今年の漢字に 「絆」 が選ばれた。 2位以下が 「災」 「震」 「波」 と災害関連の言葉が続く中で、「絆」 が1位となった。
 
  「絆」 をはじめ、 上位10位の中には 「助」 「協」 「支」 という言葉がランクインしているが、 これらの言葉は、 日本の将来の社会のあるべき方向性を示していると思う。

 元大阪大学総長の鷲田清一氏は、 「かつては自分たちで担っていた生きるための算段が、 明治以降は国家が全面的に担い、 戦後は 『会社』 が家族生活の領域まで担うようになった。 (略)近代化というのは、 かつてそうした地縁・血縁が担っていたことを行政や会社に付託することで、 しがらみから解放されることでもあった」 と書いている。

 子育てや介護など、 従来、 家族が負ってきたものが行政にサービスとして求められるようになった。

 隣近所・親戚・家族のしがらみから解放された反面、 コミュニティーは崩壊してきた。 家族の生活する場所もバラバラになり、 私たちの家庭からは、 団らんという何とも言えない温かい雰囲気が薄れた。 各人が、 周りのことを気にせず、 自己の目的に向かって走っているように思える。 それが、 3・11を境に、 大きく変わろうとしているのかもしれない。

 未曾有の津波被害の中にあって極限の悲しみに耐え、 避難所生活でも秩序を乱すことなく行動する被災者の姿に、 世界は感動の声をあげた。

 東京などでも、 震災当日から翌朝にかけての交通機関のまひや混乱の中の 「計画停電」 にも冷静に対応し、 社会秩序が乱れることはなかった。
世界が賞賛したのは、 こうした状況下で、 他の国で見られるような略奪や暴動を起こさず、 相互に助け合っている日本人の姿であった。

 人と人との絆や互いに助け合うことが、 社会の強さだと再認識された。
 自然災害に対する不安、 科学技術神話に対する不信、 人生の先行きに対する不安など、 今まで私たちが日ごろ何となく見過ごしてきた課題が、 一挙に噴き出してきているように思う。

 私たちはここで、 今一度立ち止り、 今後の日本のありようをじっくり考える時にあるのではないかと考える。

 現在、 「社会保障と税の一体改革」 の議論が進もうとしている。 政府・民主党は、 年内に素案を示すとしているが、 財政的な観点から、 増税や負担増の話が先行している。

 地域や職場、 家庭での人間的な 「つながり」 が薄れ、暴力、虐待、いじめなどが起こり、自殺、ひきこもり、不登校、うつ病などが問題となっている。

 昨年末、 公明党はこれらの問題も含めた 「新しい福祉」 へ対応する社会保障制度の見直しを提案した。

 われわれは、 公的保険制度を通じての 「間接的共助」 だけでなく、ボランティア活動も含め、グループや個人で助け合う「直接的共助」が重要であると考えている。

 新しい福祉に対応するには、 単に行政サービスを提供すればよいということではなく、社会の絆や人間の絆を取り戻すことが、 求められている。

  「孤立社会」 から 「支え合いの社会」 へ回復させる社会保障改革となるよう取り組んでまいりたい。

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