学んだ技術を母国で 理学療法士目指すハイさん


26日の国家試験に向けラストスパートをかけるハイさん (和歌山国際厚生学院で)

 県内唯一の理学療法士養成施設として、 平成20年4月に開校した和歌山国際厚生学院 (和歌山市北野、 寺下俊雄校長) の1期生がこの春、 卒業する。 卒業生たちは今月26日にある国家試験合格に向け、 今がまさに正念場。 日本の医療を学ぶためにベトナムから来日し、 理学療法士を目指すド・ミン・ハイさん (29) もその一人。 試験に合格し、 現場で経験を積んだ暁には、 日本で習得した技術を母国で伝えていきたいと、 ラストスパートをかけている。

 もともとベトナムで看護師として働いていたハイさんは、日本の医療現場を知りたいという一念から18年に来日。 同学院の母体となる医療法人進正会・寺下病院 (同市和歌町) で臨時職員として働きつつ、 和歌山外国語専門学校で日本語を学んだ。

 同病院で勤務している時、 体の半分がまひした患者が理学療法士の手により、 動かせるまで回復したことに深い感銘を受け、 ベトナムでは数少ない理学療法士になるために同学院への入学を決めた。

 ハイさんは外国語専門学校で、 日常生活で使用する日本語は学んだものの、 いざ医療関係の学校では専門用語も多く、 それを覚えるのに四苦八苦。 「一から別の世界に入った感じだった」 と入学当時を振り返る。

 言葉の壁は、 実習現場でもハイさんに、 はだかった。 リハビリの現場では、 まひのためにうまくしゃべることができない患者も多く、 日本人でも意思疎通が図れないことも度々。 そのハンディも持ち前のひたむきさで乗り越え、 勉学に励んだ。 「ベトナムはまだ日本に比べると貧しい。 一生懸命に勉強しないと職にありつけないこともある」 と、 自らの勤勉さを母国の課題に当てはめた。

 和歌山での住居は同じベトナム出身の2人と相部屋。 これまで学校は欠席なく、 登校もいつも一番乗り。 成績も優秀で、 学校の教職員も驚くほどだ。 授業が終わってからは殊勝にも病院や飲食店で夜遅くまで生活費を稼ぎ、 学費は寺下病院の奨学金制度を活用している。

 年が明け、 国家試験に専念するため、 アルバイトは休職。 4年生なので卒業に必要な単位はほぼ取得しているが毎朝8時半に登校し、 夜9時くらいまで自習している。 これまでの模擬試験では合格ラインを通過しているものの、 「本番はどうなるかは分からない」 と、 自分に言い聞かせるように参考書とにらめっこしている。

 晴れて理学療法士に合格した際は寺下病院で経験を積み、 数年後には母国でその技術を広めたい考えで、 病院理事長も務める寺下校長(62)もその意志を高く評価。ハイさんは、 「日本とベトナムでは施設も設備もまったく異なるが、 技術さえ身に付ければ何とでもなる。 まずは人間が大事で、 設備はその後でも整えられる」 と、 将来的には日本とベトナムの医療の橋渡しになることを夢みている。

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