天下り完全廃止など 社保と税の改革前に進める

岸本 周平

 日本の社会保障制度は借金で運営されています。 年金や介護など高齢者3経費は消費税を充てる約束ですが、 12年度予算ではすでに10兆円の差額が発生し、 赤字国債で賄っています。 したがって、 現役世代は社会保障の持続可能性に疑問を持ち、 将来不安から消費を抑制するという 「非ケインズ効果」 が発生しています。 実際、 貯蓄率そのものは低下傾向にありますが、 高齢化要因を調整したら、 安定して20%前後で推移。 近年は、 上昇すらしています。

 日本の社会保障制度は人口増加と高い成長を前提に作られたため、 生産年齢人口が減少し、 機能不全に陥っています。 ですから、 「社会保障と税の一体改革」 を進め、 財源の裏付けのある社会保障制度を確立することで、 現役世代の消費回復を通じ、 成長回復が可能になります。

 政府の新成長戦略が功を奏し、 名目3%の成長が実現できるように政府も努力しています。 しかし、 その場合には、 名目金利も上昇します。 金利の上昇よりも税収増が先に来る 「良い金利上昇」 であれば、 問題ありませんが、 金利の上昇が先に起きた場合、 利払い費の上昇で予算が組めなくなります。

 今の新発国債の平均利回りは1%台の半ば。 80年代の国債金利はだいたい6~7%。 90年代には4~5%。 2000年代には2~3%と、 どんどん下がりました。 ですから、 国債の発行残高が80年の5倍に膨らんでも、 利払い費の総額は減少し続けました。 いくら借金を増やしても、 利払い費が増えないので、 日本政府は神経がマヒしたように、 財政規律を失っていきました。

 ところが、 金利の低下はここまで。 今から長期金利が2%台半ばになると、 20年には国債の利払い費が約23兆円になるという試算もあります。 10年度の利払い費は約8兆円でした。 つまり、 利払い費だけで、 15兆円(消費税で約6%分)も増える勘定。 これでは予算は組めません。 実際、 12年度の当初予算ベースでは、 利払い費は約10兆円と2年間で2兆円も増えています。 利払い費増加のリスクを避けるためにも、 一日も早く 「社会保障と税の一体改革」 を進めるべきです。

 もちろん、 その前に国会議員の定数削減と国家公務員の給料のカット。 これは、 必ずやります。 民主党は、 小選挙区は既に自民党案の5人減に賛成。 比例区80人の削減も提案しました。 各党派によって、 いろいろ意見が異なりますが、 総論には各党賛成なのですから妥協しながら決めていかねばなりません。 国家公務員の給与カットの法案は既に成立しました。 公務員制度改革や天下りの完全廃止のための改革も進めます。 私自身、 公務員制度の限界や天下りの馬鹿馬鹿しさに反対し、 官僚を辞め政界に進みました。 次世代にふさわしい公務員制度をつくらなければなりません。 まずは政治家と官僚が身を切る努力をしてから、 国民の皆様にお願いすべきだと考えます。

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