紀州の歌生みの親 第九育ての親の森川さん


「和歌山の話でオペレッタを作るのが夢です」

 「紀州の歌づくりのきっかけは、 テーブルの上にあった一枚の紙。 そこに書かれた詩でした」 とにこやかに振り返る。

 一枚の紙とは、 30年ほど前、 初めて訪れた随筆家梅田恵以子さん宅で目にした紙。 詩は、 娘が嫁ぐ喜びを梅田さんがつづったものだった。 「愛情にあふれたいい詩だな」 と曲をつけると、 梅田さんは喜び、 ダークダックスが気に入って歌い、 レコードにもなった。

 以来、 和歌山を愛し、 その自然・歴史・食文化に造詣が深かった梅田さんは、 次々に詩を作って森川さんに託した。 こうして和歌山の自然や歴史を題材にした多くの歌が生まれる。

 平成2年には 「ふるさと讃歌 紀州路100曲」 でサントリー地域文化賞を梅田さんと共に受賞。 他、 混声合唱組曲 「紀の国のはるに寄せて」 「熊野」 「紀の川」 「清姫」 や県内30校以上の校歌、 ピアノ曲、 弦楽四重奏曲と作品は幅広い。

 出身は富山県砺波市。 子どもの時から 「音楽の楽しさを人に伝えたい。 音楽の道に進みたい。 こんな好きなことから外れるのは嫌」 と思っていたという。 ある人との出会いから東京芸術大学音楽学部作曲科へ進み、 和歌山大学教育学部で後進の指導に当たってきた。

 さらに、 県内の合唱愛好家が結成した 「和歌山第九合唱団」 の初演から25回までを指導。 まさに和歌山第九 育ての親であり、 県内に第九演奏会を定着させた功労者でもある。

 そしてこの出合いが作曲の方向性を変えた。 「第九と関わり、 歌や合唱曲に重力が移っていった。 若い時は難しい曲をいっぱい書いたけど、 今は、 歌えないような曲は作りたくないですね」 とほほ笑む。

 その和歌山第九はことし40周年。 夏の大合唱 (7月8日) のプログラムは、 「那智讃歌」 「熊野恋う」 「お灯祭り」 「愛するふるさと」 や混声合唱組曲 「紀の川」 など、 全曲、 梅田さんとの曲だ。

 テーマは 「台風12号の被災地にエールを」。 「大好きな紀南の山や川、 町が大きな被害を受け、 『何かやらなくては』 と思っていた。 そんな時、 第九から話があり本当に嬉しかった。 感謝です。 僕にできることは音楽しかないから」。

 市文化賞受賞については、 「大きな励み、 この仕事でいいんだと力になります。 そしてこれからもやらなければと思います」 とかみしめるように話す。

 そして 「全ては (音楽が) 好きだ、 から始まった。 人生で大切なのは人との出会いやきっかけ。 やりたいことがあり、 それを思い続けていれば、 出合った時に飛躍できるのではないでしょうか」。

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