ミャンマーの民主化を支援 ビジネスの後押しにも

阪口 直人

 3月11日は被災地に
 あの大震災から1年。 今年の3月11日を皆さんはどのように過ごされたでしょうか。

 私は宮城県に入り、 ノーベル平和賞受賞者でグラミン銀行創設者のムハマド・ユヌス氏とともに、 被災地を訪問。 追悼式典に参加するとともに、 ユヌス氏が推進しているソーシャルビジネス(短期的な利益ではなく、 企業の利益と社会への貢献が一致する新しいビジネスモデル)が復興に及ぼす力について、 多くの対話を行いました。

 アウンサンスーチー氏と面会
 私はミャンマーの民主化支援に長く関わってきました。 昨年後半から、 ミャンマーの現政権は方針を改め、 民主化への流れが加速しています。 私は民主化運動の指導者・アウンサンスーチーさんと昨年から4度にわたって電話会談を続けてきましたが、 1月9日、 アウンサンスーチーと再会。 ヤンゴン市の自宅にて約1時間、 意見交換をする機会を得ました。 アウンサンスーチーさんとの対話で、 日本に対する一番の期待は民主化支援、 特に法整備支援であることが改めてわかりました。

 ミャンマーに対する日本の立ち位置は独自の外交戦略に基づいてきました。 1990年の総選挙でアウンサンスーチー氏率いるNLD(国民民主連盟)が485議席中392議席を取ったにも関わらず政権に居座り続けた軍事政権に対し、 日本はアジアの友人としてミャンマーの国民が必要とする人道的な援助を続けながら、 相手の自主性を尊重しつつ粘り強く民主化を働きかける立場を取ってきました。 米国に追従するのではなく、 独自の方法で民主化を働きかけるというスタンス自体は評価に値すると思います。 問題は、 それが本当に機能してきたのかということです。

 私自身、 カンボジアやモザンビークなど紛争地域での 「民主化支援」 に長く関わってきましたが、 日本政府のスタンスは、 基本的には 「政治的にデリケートな問題に関わるリスクは避け、 経済開発を支援することが、 やがては民主化につながる」 というものでした。 市民社会に対する支援よりも政府に対する支援を行う。 従って、 政府との関係を重視し、 たとえ、 民主主義とは違う政治形態の政府でも内政干渉はしないのが日本外交の基本的スタンスでした。

 民主化支援が日本のビジネスを後押しする
 しかし、 経済制裁に準ずるスタンスを取っている間に中国やASEAN諸国にビジネスチャンスの多くは奪われてしまいました。 今、 世界中の経済ミッションがミャンマーを目指していますが、 「民主化支援」 という新しい領域に踏み込み、 ミャンマーの国民の意志が反映され、 利益が循環する政治や行政を実現することが、 ミャンマーの国民の利益、 日本がビジネスを行う上での優位性を築く大きな条件になると確信しています。

 そこで、 4月1日に行われる補欠選挙に民主党から選挙監視チームを送ることを企画しています。 また、 先日の予算委員会では 「国際選挙監視員」 を受け入れるようミャンマー政府に強く迫ることを玄葉外務大臣に求めました。 日本政府は補欠選挙の後、 経済協力を加速させる予定ですが、 自由で公正な選挙と、 その評価・検証が可能な状況をつくることは大規模な経済支援の加速など新たな局面に入る前提条件とハッキリ伝えるべきです。

 信頼できる選挙によって法の支配など政治・行政の民主化を確立し、 経済の民主化にもつなげる。 このことが、 日本こそができる最大の貢献であり、 経済分野における日本のアドバンテージを活かす必須条件でもあります。 環境や人権、 民族の多様性などに配慮した持続可能な経済システム、 つまり日本の良さを活かせるOSを作ることが、 中国などとの競争に勝つカギになります。 そのためにも 「民主化支援」 という大きなテーマに真正面から取り組む必要があるのです。

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