今こそ冷静なエネルギー政策議論を

大江 康弘

 ぼやぼやして、次の衆議院選挙で大阪発の橋下新党が国政に参加すれば、その公約である船中八策とやらで、われわれ参議院は廃止になって廃業に追い込まれそうな雰囲気がでてきたが、では、風任せ、世論頼み、スポンサーはマスコミで、その大阪都構想だけが目的の新党が、一体どれだけ和歌山のことに力を入れてくれるのかと言いたいが、今日のボヤキはこれぐらいにして、さて未曾有の東日本大震災から一年が経過、もう、そろそろ落ち着いたエネルギー政策論議を今日はやってみたい。

 昨年は震災後の混乱、原発の放射能漏れの衝撃もあり、極端な議論「反原発」「脱原発」へと追いやってしまったが、もうそろそろ地に足の着いた議論が必要であろう。

 そこで基礎知識を一言。今、われわれ日本人1億2700万人余が一日24時間、一年365日、朝から晩まで、今のような文化的で快適な生活を続けていくためのエネルギーに必要な原油・LNGは20万㌧から30万㌧級のタンカーが毎日、約3隻日本のどこかの港に着いていなければ、このレベルの生活環境の維持は難しいと言われている。

 はるか約1万5千㌔離れた中東からの輸入は約90%強で、ホルムズ海峡を経て、インド洋マラッカ海峡を経て台湾海峡、もしくはバシー海峡を経て日本へ、この間、約40日前後要するから、この瞬間でも約120隻(3隻×40日)のタンカーが日本へ向かって来ているという計算でなければならない。

 今、いとも簡単に「反原発」「脱原発」を声高に叫んでいる人達は今の日本の国民生活の基盤が何によって成り立っているのか真面目に考えたことがあるのだろうか。

 資源の無い日本が、そろそろ責任ある議論が求められる所以がここにある。

 「再生可能エネルギー」も当然進めていかねばならないが、日本国全体の国民生活基盤、経済産業エネルギーを含めた総合エネルギーを考えた場合、本当に再生可能エネルギーだけで維持できますか? という現実から逃げてはいけないだろう。

 例えば、今言われている太陽光発電における日照時間をみても、年間8760時間の内最も長い県は山梨県で2183時間、わが和歌山県は2088時間、最低は秋田の1526時間で全国平均は1897時間でそれに満たない県は20県もある。こんな日照時間数で果たしてどれだけの役割が果たせるのか。

 地熱、風力、水力等々あらゆる可能性は排除せず、積極的に取り入れるべきであるが、それも長期的課題である。

 私が残念に思うのは、反原発、脱原発を言っている人の多くは、かつての思想的反対、イデオロギー的反対が蘇ったかのような反対運動が目につくが国民生活の最低限の維持、経済産業維持を真剣に心配し、危惧しての脱原発を言うのであれば無資源国日本のエネルギーを維持するための決意がそこになければおかしい。

 先程指摘した原油・LNGの輸入も今はイランの核関連施設による危機や各海域での海賊問題等、そこを通過するシーレーン(輸送経路)が危険にさらされている状況であり、本来、純粋に原発が心配であれば、まず、第一に求めるべきことは原油・LNG確保のための安全強化であり、それにリンクする安全保障に対する積極的且つ建設的論議がなされるべきだが全く聞こえてこない。

 やはり今の「反原発」「脱原発」の叫びはかつて来た道、イデオロギー、思想的反対運動のなにものでもない証左であろう。

 また、政府は運転開始から40年も経た原発は廃炉(フェイズアウト)、運転期間40年超の原発は再稼動を認めないと言い、ストレステストの評価終了した大飯原発の再稼動もみえない中、4月以降には一基も原発稼動がなくなるという事態に直面するかもしれない異常な状況の中、節電などは解決のための根本的対策ではなく、今こそ真剣に、この国のエネルギー政策を語らねばならない時期である。

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