久保さん 『熊野のアリア』出版


「日常の出来事を、押し花するように」と久保さん

 短歌結社「水甕 (みずがめ)」 同人の久保みどりさん (71)=和歌山市吹上=が、 第一歌集『熊野のアリア』を㈱角川書店から出版した。 久保さんは 「私自身が忘れてしまえば跡形もなく消えてしまう日常の出来事を、 押し花をするように書き留めたものです」 とし、 「水甕」の春日真木子代表は「序」で、 「時に大胆、 時に闊達(かったつ)自在な人間表現…ゆたかな詠唱」 と言葉を寄せている。

 久保さんは「水甕たちばな支社」代表、県歌人クラブ会員。 22年新春のNHK全国短歌大会では石田比呂志選者の特選にも選ばれた。 同歌集には平成4年の「水甕」入社以来20年の作品から382首を選び、テーマに沿って構成した。 タイトルは次の1首から。

  古座峡の一枚岩に谺して 鳶のテノール熊野のアリア

 「私は生粋の和歌山人」と語る久保さんは、藤白峠や和歌の浦、 たま電車などを詠む。春日代表は 「紀伊の国の豊かな風土と対峙」「感傷や情緒を排除して、 熊野の風土の上に自在に力強く思いを馳せている」 と評価する。 他、

  動物園で河馬が一番心地 よげガバッと潜りバカッと 顔出す

  独りきり地球に残りいる ような真昼垂りくる蜘蛛の 糸あり

  うらうらと白き日傘に蝶 となるどこまでゆかん陽炎 のみち

 など作品は多彩。 日常の歌には夫との別れなどもあるが、久保さんは「歌は孫への伝言です。 孫の記憶に残ることのない主人のことを伝えられたらという気持ち」と話し、 春日代表はじめ選者や歌友に感謝。「読まれた方々が 『分かりやすくて最後まで一気に読みました』 と言ってくださるのが一番うれしい」とほほ笑んでいる。

【歌集『熊野のアリア』】水甕叢書第八五一篇 発行・平成24年3月25日 著者・久保みどり 発行所・㈱角川書店263ページ 定価・2667円(扉絵は長女の伊藤和代さんが描いている)

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