夫の遺志継ぎ 工場をイベントホールに改装


完成したホールの前でひろみさん

 海南市多田の元㈲伊東合繊メリヤス工場が、 イベントホール&ギャラリー 「一灯舎」 に生まれ変わった。 昨年夏、 がんの告知を受けた伊東堅三さんが地域への恩返しに活用したいと自宅敷地内の工場改装に着手。 今春に亡くなり、 妻のひろみさん (58) が遺志を継いで完成を迎えた。 28日、 こけら落としライブが行われる。

 堅三さんの父、 堅作さんが起業。 工場は鉄筋コンクリート造り、 平屋、 床面積約200平方㍍で平成15年から閉鎖されていた。

 商社に勤務していた堅三さんは昨年7月に病気を知り、 そのままにしていた工場を何かに活用しようと決意。 あさひUC建築設計事務所 (和歌山市) の小川恵三所長から提案を受け、 「近所付き合いできなかった地域に恩返しをしよう。 たくさんの人に利用してもらえれば、 残された家族もさみしくないだろう」 と多目的ホールへの改装に乗り出した。 しかし完成を待たず、 ことし3月死去。 ひろみさんが引き継ぎ、 夏に工事が完了、 準備を経て初の催しが行われる。

 ホールの広さは23㍍×9㍍、 100~150人が収容できる。 工場の厚い壁や骨組みといった構造がそのまま生かされており、 高い天井やシャッター扉だった高さ3㍍のガラス壁が特長。 開放感あふれる仕上がりとなっている。 木が好きだった堅三さんのこだわりもいっぱい。 エントランスはウッドデッキにし、 天井には音響効果を高めるため工夫して配置された杉が敷き詰められている。

 名前は名字の 「伊東」、 メリヤス製造で使う 「糸」、 「地域に灯 (とも) る一つの灯 (あか) りになれば」 から付けた。 また、 同じ敷地内の納屋はカフェ 「一灯庵」 に。 イベント時の飲食に利用できる。

28日こけら落とし  こけら落としは由良町出身のシンガー・ソングライター・藪下将人さんと兵庫県三田市出身のシンガー・ソングライター&マンドリンプレーヤー・藍田真一さんによるアコースティックユニット 「ヤブシン」 のライブ。 チケット (℡073・460・0625) は1500円となっている。
 ひろみさんは 「皆さまのおかげで故郷への思いを込めた主人の願いが形になりました。 気軽に生の芸術にふれながら人と人との交流、 つながりが広がる 『芸術の喫茶店』 になれば」 と明るく話している。  

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