江戸時代の屏風など公開 「和歌の浦の風景」展


初公開のびょうぶを解説する前田主任学芸員㊧

 名勝 「和歌の浦」 の魅力を紹介する企画展 「和歌の浦の風景」 が来年1月20日まで、 和歌山市吹上の県立博物館で開かれている。 和歌の浦を、 「日本三景」 に準ずる景勝地として描いた江戸時代の屏風 (びょうぶ) 5作品と大正時代の1作品を一挙に公開している他、 「和歌祭」 を描いた新発見の絵巻など39件49点を展示している。

 和歌の浦は万葉時代からの景勝地。 奈良・平安時代には天皇や貴族など大勢が訪れ、 近世に紀伊国を支配した豊臣氏、 浅野氏、 徳川氏は霊地・名所として整備・保護してきた。 また、 西国巡礼の紀三井寺参拝途中に訪れる民衆も多く、 絵画や美術作品の題材として親しまれてきた。

 展示されている屏風は、 日本三景とセットになった 「和歌浦・厳島図屏風」 や 「和歌浦・天橋立図屏風」、 和歌祭の行列が描かれた初公開の 「和歌浦図屏風」 など。 しかし砂州の形や寺社の配置、 和歌山城が描かれているなど景観がそれぞれに異なっている。

 初日の8日に開かれたミュージアムトークで前田正明同館主任学芸員は、 「画家は必ずしも現地を見ておらず、 山部赤人が詠んだ中世以前のイメージで描いた。 京都の人が作らせたと考えられる」 と話した。

 また南紀男山焼の菓子鉢や小袖、 巻物に描かれた 「シオマネキ」 (鉄砲ガニ)を紹介し、 「歌に詠まれていないのは、聖武天皇らの行幸が、カニのいない冬だったから。 和歌浦では絶滅してしまったがシオマネキは和歌の浦のシンボル」とした。 そして 「和歌の浦の景観をもう一度再認識し、 展示を見た後で現地を訪れていただきたい」と話した。

 ミュージアムトークは16日、1月6、14、 20日の午後1時半から。
 16日と1月20日は、 県立文書館職員による 「パネルでトーク『懐かしの和歌の浦―立体写真で見る景色』」もある。

 問い合わせは同館 (℡073・436・8670)。

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