生誕120年/画家・石垣栄太郎展 近代美術館

社会性の強い作品が並ぶ
社会性の強い作品が並ぶ

 太地町に生まれ、1920~40年代の米国・ニューヨークを中心に活躍した画家、石垣栄太郎(1893~1958)の生誕120年記念展が20日まで、県立近代美術館(和歌山市吹上)で開かれている。同館の奥村一郎学芸員は「これほどまとまった点数が見られる機会は少なく、アメリカ社会を生きた石垣の作品や活動を、ぜひ知ってもらいたい」と話している。

 16年ぶりの回顧展。石垣に大きな影響を与えた女性彫刻家ガートルド・ボイルの作品や大量の素描など、新たに見つかった資料を含む約110点を展示している。

 栄太郎は15歳で出稼ぎ移民として渡米。激動の米国で1920年代は生活や風俗などを描き、大恐慌後、30年代は失業や人種差別などを扱った作品を残している。

 館内には、白人と黒人の対戦を描いた「拳闘」、労働者をたたえる「腕」、ワシントンでのデモをテーマにした「ボーナス・マーチ」などが並び、奥村学芸員は「アメリカ社会で人種差別を受ける黒人の姿に、異国で抑圧を受ける自分を重ねていたんでしょうね」と話す。

 他にも、社会主義運動推進を目指す画家たちと交流し、メキシコ壁画運動の影響を受けながら、社会的な主題を扱った大型作品を制作。

 日中戦争や太平洋戦争時には反戦や反ファシズムを訴える作品も描き、貝塚市から訪れた男性(46)は「重厚な作品が多く、強いメッセージが心に響きました」と話していた。

 子どもを対象としたギャラリートーク(大人のみ、親子での参加も可)は6日午後2時から。
14日午後2時からは太地町歴史資料室の櫻井敬人学芸員を迎えた講演会「海を越える太地・南紀州移民史」がある。

 入場は一般500円、大学生300円。高校生以下、65歳以上などは無料。問い合わせは同館(℡073・436・8690)。

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