WAKAYAMA NEWS HARBOR
和歌山さんぽみちプロジェクト

地球深部探査船「ちきゅう」 紀伊半島沖で南海トラフを調査

調査する「ちきゅう」(串本町田並から撮影)

 9月下旬、串本町内の国道42号線を走行中、車窓から見慣れない船が見えた。ひときわ巨大な船で、中央には大きな櫓(やぐら)やアームが装備されている。

 船の名は「ちきゅう」。独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が所有する地球深部探査船で世界最高の掘削能力を持ち、海底下7000㍍まで掘削可能。地球奥深くのマントルに達するほどだ。掘削用デリック(中央の大きな櫓)は高さ130㍍を誇り30階建てのビルに相当する高さ。

 同機構によると「ちきゅう」が紀伊半島沖で活動している理由は、南海トラフによる巨大地震とそれによる津波発生のメカニズムを解明するため。地震発生地帯とされる新宮市から南東に75㌔の海域で来年1月までに海底下3600㍍まで岩盤を掘削。巨大地震を繰り返し起こしていると考えられる断層の地質試料を採取・分析することで、地震発生現場の地質学的特徴を把握しようとしている。

 これは、日米が主導国となり平成15年(2003)10月から始動した多国間国際協力プロジェクトの一環で26カ国が参加。平成19年(2007)から「南海トラフ地震発生帯掘削計画」として取り組んでいる。来年度以降は海底下5200㍍まで掘り進め、最終的には地震発生現場からリアルタイムでデータを取得できるようにする。

 それにより南海トラフ地震で想定される震度や津波予測の精度が向上するという。東日本大震災以来、津波による浸水が想定される国道42号線の道沿いに津波のマークと海抜が表示された標識が増え、私たち和歌山県民にも地震と津波への危機意識が強くなった。願わないことだが、近い将来起きる可能性が高い大地震による被害を、できる限り最小限にとどめられるよう貢献してくれている「ちきゅう」の活躍を祈るばかりだ。 (次田尚弘/和歌山)