希少魚「アブラボテ」 守る会が活動3年目


守る会の皆さん㊤と絶滅危惧I類のアブラボテ

県内では、県北部のとある川にしか生息していないとされるコイ科の淡水魚「アブラボテ」(全長5~8㌢)を守ろうと、生息する川の地元住民らは2年前に「アブラボテを守る会」(藤田勉会長)を発足。県レッドデータブックで「絶滅」に次ぐ「絶滅危惧(きぐ)I類」に分類されている希少な魚で、守る会は生態調査、自然保護など3年目の活動に入った。

活動を中心的に行うのが、岐阜県出身で現在、串本古座高校串本校舎の講師をする山田大貴さん(25)。山田さんは和歌山大学4回生の頃、卒業研究テーマとして調査を始め、1年間はアブラボテの生態、生息しやすい水路を調査した。卒業し、三重大学大学院生物資源学研究科に進んだ後も、毎月県北部の川を往来し、調査を続けた。

大学院の頃、懸命に調査する山田さんの姿を見ていた地元の藤田会長(65)と石田文雄さん(60)が「アブラボテ、彼(山田さん)の研究を発表する場をつくろう」と守る会を設立。現在、地元住民ら約20人が会員となり、川の生物を探す観察会や、勉強会を開いている。藤田会長は「豊かな自然と共存できる生活を目指したいですね」とにっこり。

調査を通してアブラボテは二枚貝「マツカサガイ」に卵を産み繁殖するが、マツカサガイの個体数は非常に少ないことが分かった。貝の生息地を保護することで、アブラボテの繁殖の拡大につながるという。

アブラボテが減少する原因の一つに水路のコンクリート工事がある。近年は水はけや見た目を良くしようと水路がコンクリートで改修されることが多く、アブラボテ、マツカサガイはすみかを失っているという。

研究を続ける山田さんは「アブラボテがいるということは、豊かな自然が残っている証拠。珍しい生き物で、地元住民の誇りに思ってほしい」とし、「活動をしていく仲間と共に、地域の環境保全をしていきたい」と力を込めた。

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