一対一の信頼関係から友好を 日韓親善のN響ソウル公演へ

門 博文

 6月1日午後8時。

 私はソウル市郊外の「芸術の殿堂」というコンサートホールに居りました。日韓友好議員連盟の一員として両国の親善の最前線に参加するためです。昨今の両国の状況は皆様もよく承知されている通り決して良好ではありません。また、先日の痛ましいフェリー事故において多くの若者の尊い命が失われた、そんな悲痛の思いが韓国には覆いかぶさっております。

 そんな折、二階俊博衆議院予算委員長の呼びかけにより企画された「NHK交響楽団ソウル公演」。和歌山はもとより全国から賛同、駆け付けた300名の日本人とともにこの場に参加する機会をいただきました。二階先生におかれては長年、この両国の友好親善に尽くされ韓国政界、財界にも多くの「友人」をお持ちです。今回はそのつながりの中から「この困難な状況を乗り越え一日も早く両国首脳が心を開き未来志向の友好親善に向かって歩み始めよ」との強いメッセージを伝える意義がありました。

 2500人収容のコンサートホールに溢れんばかりの大聴衆の中、N響の奏でるハーモニーが場内に響きわたり、一同感動のひとときを共有いたしました。フェリー事故の犠牲者への鎮魂曲から始まり韓国人ピアニスト、ソン・ヨルウムさんとの協演。そしてN響の実力を思う存分示したマーラー交響曲第4番。フィナーレは韓国の民謡アリランを交響曲としてアレンジした勇壮な演奏で場内万雷の拍手とスタンディングオベーションで興奮の絶頂を迎えました。この瞬間、両国の間には何のわだかまりもなくなったような気がしました。N響のパフォーマンスの素晴らしさはもとより両国民の心の底にある本来の「優しさ」を感動のメロディが呼び起こしたのだと思います。

 配布されたパンフレットには安倍総理からのメッセージも織り込まれ、日本側からのはっきりとしたメッセージも伝えられました。私はこの公演を機に両国の友好関係は加速度的に改善していくものと確信しています。またこの場に居合わせた者として自らこの状況を切り開く先頭に立っていかなければならないと決意しました。 

 私たち日本にとって韓国はお互い長い歴史を織りなしてきた隣国です。時には心痛む不幸なひとときがあったのも事実です。しかし、この一事一事を今、あらためて掘り返すのではなく、私たちは未来に向けた友好関係を築いていかなければなりません。事実は事実として認め、それが良かったか悪かったか両国の見立て、価値観によってその評価はおのずと異なるものです。そこに視点を集中させるのではなく、次の時代を担う私たちは未来に向けた視点の中で両国のこれからの理想の関係、姿がどうであるべきか話し合っていくべきです。その上でアジアの発展に対してこの二国の果たすべき役割を担っていかなければなりません。どちらの国も若年層、また特に女性層ではドラマや音楽で相当友好的な気持ちが浸透しているという現状も伺いました。事実、私の娘もK―POPが大好きです。これらの人々を見習い私たちは普段の生活で感じ、すでに体験しているお互いの文化を通して、市民レベル民間レベルで友好と交流を図っていくべきだと考えます。

 この訪韓を経て私は一つのアイデア、試みを思いつきました。友人とは、恋人とは、その人の名前や顔、人となりや好みをもちろん知った上での関係です。例えば日韓両国でそれぞれの国をよく言わない人たちはこうした友人や知人をお互い持ち合わせず、悪い感情を抱き発言を行っています。相手の名前や顔も知らない上で勝手なことを言うのは無責任です。私は特に政治の場に身を置く者は、まずこの点に注目し「マントゥーマン」「一対一」の関係を作ってはどうかと思いました。カップル、コンビ、「友達作戦」です。具体的なパートナーを通じ、その中でまずお互いの信頼関係を築き、そしてそれを10人、100人、1000人とつなげていく。そうすれば友好の絆はきめ細かく、また力強く広がりを見せるのだと思います。漠然と友好というのではなく、顔の見える友人をぜひ作っていきたいと思います。

 今回の訪韓が私にとってはもちろんのことですが、次の世代の人々にも有意義なものとなるよう今後も取り組んでまいります。

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