民泊の仲介業者に責任を 安全安心なルール順守に課題

鶴保 庸介

ベルギーでテロ事件が起きました。
この事件でわれわれが思うことは日本人の被害者はなかったか、これからわが国で同じようなことが起きないかという心配であります。
しかし、聞くとアメリカ政府からの照会にベルギーが応じなかった経緯があると報道されていました。仮に事実だとすると、テロ情報の共有ができていなかったことになります。
犯人情報はすでにアメリカ政府によってテロに関与する重大関係者となっていたというのですから、これはベルギー政府にとっては痛烈なしっぺ返しということになるでしょう。
このように世界は徐々にその距離を縮めていかざるをえませんが、まだまだその国の主権、主体性を尊重しなければならない時代。今はその過渡期なのかもしれません。私がおまかせいただいている観光基盤整備に関する小委員会。今は民泊を議論していますが、ここでもそうです。ご存知のとおり、民泊はいよいよ制度設計をする段階に来ていますが、もうすでにアンダーグラウンドで勝手に手持ちの不動産を宿泊に使わせている事例が後を絶ちません。
断っておきますが、現行法律下でも反復継続的に不特定多数の人を宿泊させれば業を行っているとみなされて旅館業法違反となります。
しかし、もっと深刻なのは①これらの部屋の提供者と宿泊者を結びつける仲介業者はそれなりの手数料を取っていてもいくらぐらいのもうけなのか、支払うべき事業税はどれくらいなのか全く分からないということ、②これらの仲介業者が宿泊に関するトラブルには全く責任を負わないというシステムになっていること、であります。
なぜそうなっているのかを仲介業者に聞くと、彼らはあくまで業を行っているのではなく、ネットなどを使って人と人とをつなぐ「サービス」を行っているに過ぎず、従って、①それは税金を支払うべき業務ではない、②宿泊者と部屋のオーナーの間のトラブルは当事者間で片付けていただくのがこうした仲介業者の建前である、との回答が返ってきたのです。
うーんこれは。
最近ではフランスなどでの実態が伝わってきて、民泊の事業規模は国内だけでも数百億とも言われるようになっています。とすればそこから支払われるべき税金はどれくらいになるのか。
また、宿泊者とのトラブルは部屋オーナーだけではなく、近隣の住民ととても多く、その苦情は年々増えています。
ということで新しくルールを決めて仲介業者にしっかりとした管理責任を負っていただくことにします、と小委員会で宣言しました(あとで政府部内で民泊に関する検討会という有識者の会議でオーソライズされそちらが先に報道されましたが)。
が、めでたしめでたし、かというとそうではありません。
そこで先ほどの論点が出てくるのです。
民泊の仲介業者は今のところ自然発生的にすすんでいます。
そして先述したように付随するトラブルが多発してきているのですが、さて、この仲介業者に何らかの義務を課した場合、果たして厳密にこれを守らせることができるのか。
特に最近の仲介業者で伸びているのは中国の仲介サイトで、もしこの方々に初めから日本のルールを守る気がなかったとしたら、どうなるでしょう。
税金は脱税し放題、近隣住民へのトラブルはほったらかし。テロや犯罪の温床に使われても、お構い無し、という仲介業者がはびこったらどうするのか、決めてあるのでしょうか。
今のところ、この海外サイトの運営業者が本当にわが国のルールを順守するよう求めるだけであります。テロ情報の共有すら拒んだりする世界に果たして日本は自国の安全安心なルールを守らせることなどできるのか、大変難しい問題をはらんでいます。
私はこうした思いをもって予算委員会で今度の伊勢志摩サミットの議題にしてはどうか、と総理に呼び掛けましたが、はて、届いているでしょうかね。

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