5つめの新たな社会の姿 経済発展と課題解決の両立を

石田 真敏

「時代の大変化」が、顕在化しつつあります。「2030年の日本」で指摘した人口・技術・環境・時空の四大変化です。
そういう中でソフトバンクの孫氏が、イギリスの「アーム社を3・3兆円で買収」し、「社長続投」を表明しました。賛否両論ありますが、これをどう読み解くかです。

まず買収については、IoT・ビッグデータ・人工知能・ロボットという一連の流れで産業や就業の構造が劇的に変わると指摘される中、その基盤であり20年以内に1兆個(現在の100倍)以上の普及が予測されるセンサーの世界的企業を押さえたということです。
また社長続投については、まさしく今後大きく花開く未知の新しい社会の様相がおぼろげながら姿を現し、持ち前の起業家精神が再び頭をもたげてきたのではないでしょうか。

では新しい社会とは、どういう社会かです。

政府は「Society5.0」という言葉を使い始めました。狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く、5つめの新たな経済社会という意味です。
サイバー(電脳)空間とフィジカル(肉体・物質)空間の高度な融合で、地域、年齢、性別、言語などによる格差なく、きめ細かに対応したモノやサービスを提供できるようになります。このような多様なニーズに応えることで、経済的発展と社会的課題の解決の両立をはかり、快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることのできる人間中心の社会としています。

この大きな動きのきっかけは、人工知能が囲碁で世界的な棋士に勝ったことです。予測より10年近く早く、技術革新のスピードが想定以上ということです。
これを受け、自民党でもさまざまな組織や勉強会が立ち上がりました。たとえば人工知能未来社会経済戦略本部では、有識者ヒアリングや意見交換を重ね、政府の体制整備、人材育成、法整備、セキュリティ対策、支援策などの緊急メッセージを4月に出したところです。今後もしっかり対応していくことが重要です。

一方、政府の取り組みも加速しています。経済産業省は4月に「新産業構造ビジョン中間報告」を発表し、技術革新の流れを第4次産業革命と位置づけ、これをリードする戦略的取組を始めました。文部科学省はH28科学技術白書で「Iot・ビッグデータ・人工知能等がもたらす『超スマート社会』への挑戦」を特集し、総務省でもH28情報通信白書で「Iot・ビッグデータ・人工知能、ネットワークとデータが創造する新価値」を特集しています。現在の政府の認識がわかり、一見の価値ありです。

これ以外にも、難病治療薬が発見された創薬や再生医療、輸血用血液などの進展が期待されるIPS細胞、さらにゲノム解析の活用による医療分野、そして鉄より強く軽い炭素繊維やセルロースナノファイバーなどの新素材、また水素エネルギーなどの新エネルギー、さらに衛星の活用や高速大容量通信を可能にする第5世代通信などが現実のものとなりつつあります。

これらの新技術を生かして、どのような経済社会を築きあげていくか、まさしくアベノミクス第3の矢、成長戦略が姿を現してきたと考えます。企業家の皆さんの活躍を期待したいと思います。

ただ、産業革命には光の部分と陰の部分とがあります。それぞれへの対応が必要であり、人口や環境の変化に伴う課題への対応もあります。
これら全てを視野に入れ、豊かでゆとりある人間らしい生活ができる人間中心の社会を作るために、どのような日本の姿を目指すべきか、懸命に考えたいと思っています。

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