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和歌山さんぽみちプロジェクト

伊勢路旅(39)三重県伊勢市③

前号では、20年ごとに伊勢神宮で行われる式年遷宮(しきねんせんぐう)を支える地域住民が一体となった、お木曳き行事を取り上げた。この他にも遷宮にまつわる諸行事がある。今週は、新たな御正殿の敷地内に敷き詰められる白い石を奉納する「お白石持(しらいしもち)行事」を紹介したい。

お白石持行事の歴史は今から約550年前にさかのぼる。寛正3年(1462)の第40回の式年遷宮から始められたとされている。同行事が行われる2~3年前から町ごとに構成された奉仕団(かつては神領民と呼ばれた)が、紀伊山地の大台ケ原から伊勢湾へと注ぐ全長約100㌔に及ぶ三重県最大の河川「宮川」の伊勢市~度会町付近を訪れ、河原の白石を採取。採取した白石を町内の神社など清浄な場所で大切に保管し、遷宮に備えるという。白石は石英の一種で水晶のような透明感が特長。子どものこぶし大で光沢があり適度な角張りのあるものが望ましいという。

遷宮の時期が近づくと、白石を樽に入れ各町から奉曳車で運ばれる。内宮へは途中から五十鈴川を上り、さらに白石の一つひとつを白い布に包み参道を進む。そして建築されたばかりの御正殿の周囲に白石を大切に並べていく。

そこは、遷宮が行われた後は一般人が立ち入ることができない領域。参加者はその領域に入ることができる唯一の機会として白石を納めることを誇りとし、奉仕団の一体感も増すという。前回は地域の方々で構成される奉仕団と全国から集まる特別神領民の延べ23万人が奉仕したとされ、地域を挙げての行事であることは明白。

伊勢神宮へお参りされる際は、長年受け継がれてきた地域の方々の奉仕の心も感じていただきたい。

(次田尚弘/伊勢市)