免疫学者の菊谷さんらに 28年度県文化表彰

県の文化向上や発展に貢献した人に贈られる平成28年度県文化表彰の受賞者が決まった。「文化賞」は、かつらぎ町出身の免疫学者・菊谷仁さん(65)=大阪府=、「文化功労賞」は和歌山市出身の音楽プロデューサー・井阪紘さん(75)=神奈川県=、同市の書家・名手隆子さん(82)、那智勝浦町出身の自然環境研究家・南敏行さん(70)=新宮市=、「文化奨励賞」は海南市の書家・小西浩太さん(36)、湯浅町の画家・妻木良三さん(41)、和歌山市出身の作曲家・成本理香さん(47)=石川県=に贈られる。

昭和39年度から実施している表彰で、本年度で53回目。表彰式は25日午後2時半から県庁正庁で行われ、受賞者には表彰状とメダル、副賞が贈られる。受賞者の主な経歴と功績は次の通り。

【菊谷仁さん】
県立医科大学卒業後、大阪大学大学院医学研究科で医学博士を取得。米国での研究員などを経て、平成8年に同大学微生物病研究所教授就任。28年から同大学名誉教授などを務め、教育や研究に従事。数多くの優れた論文を発表し、21年に「セマフォリン分子群による免疫制御機構の研究」で文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)を受けるなど、医学の発展に尽くしている。

【井阪紘さん】
同志社大学卒業後、日本ビクター㈱に入社。営業を経てクラシック音楽のプロデューサーとして150枚以上のレコードを制作、多数の賞を受賞した。独立後、約10年かけてレコーディングの拠点をウィーンに設け、活発な録音活動を展開。東京藝術大学大学院で応用音楽学特殊研究科の講師を務めるなど、音楽文化を伝える人材の育成にも尽力。クラシック音楽を長年にわたり支え続けてきた。

【名手隆子さん】
号は朱舟。県立桐蔭高校で故・天石東村氏に指導を受けた。高校で書道科教諭を務め、和歌山大学の非常勤講師としても、かな実習の講義を担当し、書道教育に尽力。平成9年に書道グループ「朱睦会」を結成し、後進の指導にも情熱を注ぐ。県美術展覧会や和歌山市美術展覧会、日本書芸院などの審査員としても活躍。日本の古筆を中心に研究し、かな書道の美を次世代に伝えてきた。

【南敏行さん】
和歌山大学教育学部在学中から、昆虫の研究を開始。卒業後は中学校理科教諭の傍ら、生物を研究。専門分野は昆虫で、特にトンボを重点的に調査・研究し、県のトンボ研究の第一人者。県レッドデータブック改訂時は、専門委員として昆虫をリストアップし、貢献した。現在、熊野自然保護連絡協議会会長などを務め、自然保護思想の普及や希少生物保護への功績は多大。

【小西浩太さん】
号は泰鳳。幼い頃から書の道に励み、平成8年に下津町教育委員会からの委嘱による熊野古道沿いの万葉歌碑揮毫の他、中央書壇でも高い評価を受けた。18年に日展初入選、以後10年連続で入選を果たし、ことし4月に日展会友に推挙。近畿大学や龍谷大学などで教壇に立ち、母校の同志社大学書道部で指導するなど、関西全般で活躍。書家・教育者として書道文化の向上や発展に寄与している。

【妻木良三さん】
武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業、同大学院造形研究科美術専攻油絵コース修了。平成10年から鉛筆画を描き始め、東京での活動を経て20年に湯浅町に帰郷。実家の本勝寺で僧侶を務めながら、ドイツや香港でも作品を発表。布のひだが連なる風景を基に、鉛筆1本から生み出されるモノクロームの世界は、山や盆地などの風景、皮膚や体内を思わせ、独自の世界観で高い評価を受ける。

【成本理香さん】
本名は田中理香。愛知県立芸術大学音楽学部音楽科作曲専攻を首席で卒業。同大学院修士課程修了。多数の音楽コンクールで入選し、平成20年に日本人として9年ぶりの第29回入野賞を受賞。手掛けた曲は欧米各国でも演奏され、CDリリースや楽譜出版されている。22年に米国から特別研究員の招へいを受け、翌年渡米。27年に同国のコンクールで3位入賞など、世界規模で活躍。日本の伝統音楽と現代音楽の研究を重ねている。

左から菊谷さん、井阪さん、名手さん、南さん、小西さん、妻木さん、成本さん

左から菊谷さん、井阪さん、名手さん、南さん、小西さん、妻木さん、成本さん

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