地域の絆が命を守る 市民防災大学で訴え

阪神・淡路大震災の発生から17日で22年を迎える。同震災を踏まえ、災害への備えの充実強化を目指す「防災とボランティア週間」(15~21日)に合わせ、各地で取り組みが行われる中、和歌山市は15日、市民防災大学講座を市消防局庁舎で開いた。約100人の市民が参加し、災害から命を守るための地域のつながりの在り方や、一人ひとりに何ができるかなどを学んだ。

開講式には尾花正啓市長がメッセージを寄せ、防災力向上には市民一人ひとりが知識を身に付け、意識を高めることが重要とし、学んだことを家庭や地域に持ち帰って広げてほしいと呼び掛けた。

前半は、仙台市地域防災リーダー(SBL)を務める菅野澄枝さんが「東日本大震災からの私たちのまちづくり~SBLは大切な人を守るために~」と題して講演した。

同市内陸部の岩切地区で被災した菅野さんは、避難所生活などを通じて「自分は何もできない」と痛感。避難所に寄せられた菓子の分配を巡って涙する母親の姿を見るまで、公平に分配するために自分が手伝えることを思いつきもしなかったことなどを強く後悔したという。

「もっとできることがあった」との思いから、地域防災のためにできることを自ら学び始め、自主防災組織と協力し、地域の活動を推進、指示するSBLに参加。知らない人、話をしない人の言うことを人々は聞かないという避難所での体験から、地域の各種団体や行事などに積極的に関わり、さまざまな年代の住民とふれあい、仲間づくりを進めた。

自分の地域に大切な人を増やし、周りの人と助け合う「近助」を大事に、大変なときには「助けてほしい」と声を上げられる地域づくりの大切さを強調。自身が作成メンバーの代表を務めた「岩切・女性たちの防災宣言2015」を読み上げ、「昔から住む人、新しくこの町に住む人、世代を超えてつながろう。安心して毎日を過ごせるように。お互いの命を守れるように」と呼び掛けた。

後半は、兵庫県の人と防災未来センターの本塚智貴研究員が講演。昨年4月の熊本地震の発生翌日に現地入りした際に目の当たりにした、被災地の実態と課題を語った。

熊本県益城町では、避難所運営が行政職員任せのため、職員が役場に不在となり、情報共有ができないなどの問題があった一方、自主運営による指定外避難所で住民間の調整がスムーズに図られていた例があったことなどを紹介。顔の見える自治会のつながりを重要なポイントに挙げ、つながりが希薄な状態で、災害だけをターゲットにした自主防災組織があっても機能しないことを指摘した。

地域の防災力を高めるために、防災訓練などが主催者からの一方通行になっていないか、参加メンバーが固定化されていないか、内容がマンネリ化していないかなど、検証すべき視点を示した上で、「訓練で重要なことは何かに失敗して気付くこと。準備不足などを批判するのは簡単だが、自分のことに置き換えて、何ができるかを考えてほしい」と訴えた。

100人の市民が地域防災を学んだ

100人の市民が地域防災を学んだ

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