グローバリズムは終わるのか? ジャパンファーストの時代へ

岸本 周平

 トランプ大統領が自由貿易から保護主義の方向に舵を切り、アメリカファーストの内向きな政策を目指しています。イギリスはEUからの離脱を通告しました。いったい、世界はどんな方向へ進むのでしょうか?
 グローバリズムのおかげで、働く人の給料は、発展途上国の水準に近づいていきました。先進国ではそもそも、雇用の場が無くなっていきます。多国籍企業は、税制や社会システムの違いを利用して国際的にビジネスを展開し、もうけの最大化をねらいます。ITと金融自由化があいまって、ぬれ手にアワの強欲な資本主義がはびこりました。上位1%のお金持ちが全体の99%の資産を持つような貧富の格差が広がっています。
 アメリカやイギリスの動きは、これらに対する異議申し立てなのかもしれません。行き過ぎたグローバリズムから自国の労働者を守るのは、政治家の当然の務めです。トランプ大統領は、メキシコの不法移民を攻撃しますが、NAFTAによって、安いアメリカのトウモロコシがメキシコ農業を壊滅させ、数百万人の農民が職を失ったことが原因です。メキシコの自動車工場などで働ける労働者は数十万人に過ぎません。
 100年前にも電信や蒸気船の発明、自由貿易の進行によってグローバル化が進みました。その結果、弱った農民や労働者の反対で、保護貿易、ブロック経済に移行し、ナショナリズムの高まりによって二度の世界大戦に突入。歴史は一直線には動かないようです。
 一方、第二次世界大戦後のブレトンウッズ体制やモノの貿易だけを対象にするGATT体制はマイルドなグローバル化を進めました。その後、農産物の自由化や金融の自由化によって行き過ぎたグローバリズムがはびこり、今やその修正局面を迎えています。そうだとすると、しばらくの間、この流れは元には戻らない可能性があります。良いか悪いかは別として、自由貿易や規制緩和によって経済が成長するという考え方が通用しない世界の始まりかもしれません。私たちも、安易なナショナリズムには注意しながら、ジャパンファーストで行動する時代に直面しているのでしょうか。冷静な判断が求められます。

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