鍵を握る猟犬の育成 ハンタールポ㊥
イノシシの狩猟において、捕獲の鍵を握るのは犬だといわれており、古くからイノシシ猟に従事してきた人は、優れた猟犬を育てることに苦慮してきた。
20歳の頃から猟を始めた有田川町の深瀬俊一(64)さんは、これまでに飼育してきた20匹の猟犬の中で「100点をつけられるのはわずか2匹だけ。良い猟犬は貴重」と話す。
優れた猟犬は、山中でイノシシを発見すると攻撃的に吠え、気迫でイノシシをその場から動けなくする。そのため、ハンターが銃で仕留めるのが容易になり、捕獲の成功率も高くなるという。
犬と共に山に入り、ホイッスルで誘導する役目「勢子(せこ)」を務める深瀬さんが現在飼育しているのは、3歳の雄のゴマと雌のムクのきょうだい。体重は2匹とも15~16㌔。黒目の部分が金色の「金目」で、猟犬に向いているという説もある。
きょうだいの母・ココは気性が強く95点、その気性を受け継いでいるゴマは90点、気の優しいムクは55点と深瀬さんは評価する。
「100点だった」と深瀬さんが思い出すのは、田辺市龍神村で過ごした少年時代に活躍していた雌のルビー。その胸には、勇敢さを証明するように数々の負傷の跡が刻まれていたが、ルビーは傷を負うたびに、積極的に攻撃する“猟欲”が強くなっていったという。
近所の大人たちが狩猟を終え、獲物の処理などをしながらあれこれと報告をするのを聞きながら、深瀬少年はルビーの活躍ぶりに胸を躍らせていた。
ルビーの血を引くココやゴマには猟欲の強さがしっかりと受け継がれているが、ムクは負傷の経験以来、恐怖心を抱いてやや消極的になったという。
「50点の犬も勢子との信頼関係が築かれていれば、ちゃんとシシが狩れる」と深瀬さんは話す。犬の性格の違いを観察しながら、生まれて3カ月の子犬から一人前の猟犬になるまで訓練する過程がとても楽しいと笑顔を見せ、今後も育成を続けていこうと考えている。(続く)
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