松下幸之助の原点 与儀さんが電子書籍

 和歌山市岩橋の作家・与儀清安さんが、パナソニック創業者で同市出身の松下幸之助の波乱の半生を記した電子書籍『和佐富士は見た~松下幸之助の伝説的原点』を風詠社から出版した。残された歴史資料などから、特に経営哲学の原点になったとも言える、貧しかった少年期に焦点を当てて執筆。与儀さんは「困窮した生活の中、病弱ながら苦労を重ねて踏ん張った精神力の強さを感じ取ってもらえたら」と話している。

 与儀さんは大阪府出身。若い頃から歴史に興味を持ち、約20年前にも本紙で、幸之助の生い立ちを記した「松下幸之助の原点」を連載している。

 本のタイトルは、幸之助が生まれた和佐村(現在の同市禰宜)にそびえ、「和佐富士」の別名を持つ高積山に、幸之助の成長を見守るさまを重ねた。

 これまで幸之助に関して多くの文献を調べてきた与儀さんだが、父の政楠が経営していた本町の下駄屋と、下駄屋閉店後、一時期移り住んだとされる裏長屋がどこにあったのかが不明で、大きな関心事であったという。今回、地元の久保丁に住む高齢者の証言などから明らかになり、過去の資料などを交えて、小説風に仕上げた。

 同書では、8人きょうだいの末っ子として生まれ、父が米相場に手を出して失敗してからの一家の困窮生活、兄や姉の相次ぐ病死を乗り越え、9歳で一人汽車に乗り、大阪まで奉公に出た松下少年の姿を、生き生きと浮かび上がらせている。

 与儀さんは「追い詰められる中、精神的に強くなっていく姿を強調させたかった」と話す。和歌山でのつらく貧しい日々を振り返り、思いをぶつける幸之助に父が無念の涙を流し、その姿を深く心に刻むシーンなども。また、客に頼まれたたばこをまとめ買いして単価を安く済ませるなど、商才ぶりが伝わるエピソードも盛り込まれている。

 定価1500円(税別)。インターネットで取り扱っている。問い合わせは風詠社(℡06・6136・8657)。

「あまりふれられなかった少年期を描いた」と与儀さん

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