人口減少と所有者不明土地 都市と地方で変わる価値観

門 博文

 この度の大雨で全国各地で甚大な被害が発生しています。心からお見舞い申し上げるとともにお亡くなりになった方々に心よりご冥福をお祈りします。また安否のわからない皆さんには一刻も早くご無事が確認されることをお祈りいたします。和歌山市内でも7月6日の未明からの激しい雨で大規模の冠水や土砂崩れなどが発生しました。昨年10月の台風21号での浸水被害の記憶や傷痕がまだ癒えていない状況での再度の水害の到来で地域の皆さんのご心配はいかばかりかとお察しします。被災された皆さまには心よりお見舞いを申し上げます。改めて「国土強靭化」の必要性を痛感する次第です。改修箇所の早期着工、完成が必要であることを再認識しました。政権与党の議員として県・市と協調し国土交通省を始め中央省庁にこの実情を訴えてまいりたいと思います。
 さて国会は会期が今月の22日まで延長され現在は参議院を中心に重要法案が審議されています。私は今国会でも国土交通・法務両委員会で質問をいたしました。偶然にも同じ社会現象に対応する法案の審議でした。前回もご報告しましたが「所有者不明土地」や「相続」に関わる内容です。「人口減少社会」の到来で従来では考えもつかない問題が現在の日本に発生しまた発生しようとしています。「所有者不明土地」とは字の通り所有者が誰か確認できない土地のことです。全国に九州と同じ程の面積が既に存在しているとのことです。何故、このようなことが起こるのか。原因の一つは皆さんもご想像がおつきかもしれませんが「相続」が行われていないという点です。このことと前述しました「人口減少社会」の到来が大きく関係します。人がお亡くなりになると相続が発生します。しかしこの相続には期限や義務が明確に定められていません。相続をせず放置してしまう理由を考えてみますと個々にはさまざまな理由もあるかと思いますがそもそもその土地、不動産に価値があるかどうかということが一つの重要なポイントであると思います。この点で和歌山でもまた全国でも既に起こっている現象を簡単に説明します。故郷を離れて都会で就職し家庭を築いた人たちが郷里の親が残してくれた家や田畑、山林をどう評価し考えるか。親御さんがお亡くなりになっても郷里に帰ることもなく退職をしても生活の基盤を従前の場所に置いたままにすると故郷の財産は固定資産税の支払いや管理や空き家の撤去に不意な費用がかかるただけのものとなってしまいます。不動産が負動産となってしまうわけです。そこで相続そのものをためらい放置するということが「所有者不明土地」の発生を助長させる一つの要因となってしまいます。このように都市と地方、都会と田舎の格差の中で土地に対する価値観が大きく変わってきてしまっているということは、ひとえに人口減少がもたらした現象であると思います。人口が増加している時代では土地はますます必要となっていきますが人口が減少し空き家が増えてきた局面では土地の価値がどんどん低下し揚げ句は売却もできずにまさに負担になるばかりと考えられてしまいます。私も直接、自治体の長から「最近、土地を寄付したい」という申し出が増えているとのお話を複数お伺いする機会がありました。これから間違いなく急速に人口が減少していく局面に入ります。和歌山県も100万人を超えていた人口が今年の5月の発表では93万8000人と報告されました。1年に1万人という減少速度を考えますと2020年東京オリンピックの年にはいよいよ90万人を割り込んでしまう事態に遭遇することになります。私たちは漠然と人口増加を背景にした思考をいまだに引きずっているのかもしれません。明確に人口は減少する。しかも想像しているよりも早いペースで。このことをしっかり認識し思考や行動のギアをきちんと切り替えなければこれからの時代は正しくサバイバルできないと思います。この人口減少という社会現象に対応した政治や行政のかじ取りは想像以上に責任重大な役割であります。このことをしっかり意識してこれからも故郷のために頑張ってまいります。

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