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和歌山さんぽみちプロジェクト

家康紀行(73)名古屋の味の決め手「八丁味噌」

前号では、地域の身近な食材や人々の暮らしから生まれ親しまれる「おにぎり」で、名古屋めしの一つ「天むす」を取り上げた。今週は家康生誕の地、愛知県岡崎市名産の八丁味噌を用いた「味噌カツ」を紹介したい。
味噌カツは濃い赤褐色をし甘辛い味が特徴の八丁味噌をベースに、カツオだしなどを加えたソースを並々と豚カツにかけたもの。天むすと同様に三重県津市が発祥の地とされ、主に中京圏で親しまれている。
八丁味噌は原材料の全てを大豆とした豆味噌。直径、高さともに約2㍍の桶に約6㌧の味噌を仕込む。麻布をかぶせ、合計約3㌧に及ぶ大小さまざまな石を均等に載せ、二夏二冬、じっくりと熟成。味噌汁など、調味料として広く活用される。
昨今は、味噌に含まれる遊離リノエール酸という成分が、シミ、ソバカスの原因となるメラニンの合成を抑えることから美白効果が期待され、また、コレステロールを抑制することから心筋梗塞や脳梗塞の予防にも効果があるなど、健康食としても注目されている。
味噌カツの他にも「味噌煮込みうどん」「味噌おでん」「どて煮」など、八丁味噌をベースとした名古屋めしが存在するなど、地域の食文化を支えている。
和歌山県の特産品である金山寺味噌は、八丁味噌とは異なり、米、麦、野菜などが加えられた、おかず味噌。熟成期間は1週間から3カ月程度と短い。調味料にはならないが、おかずや酒のさかなにそのまま食べられる。徳川吉宗が幕府に献上したことから全国に広まったとされる。
個性的な料理に姿を変える八丁味噌と、おかず味噌として倹約に貢献する金山寺味噌。いずれも家康の精神が今に息づく伝統的な食文化といえよう。
(次田尚弘/名古屋市)