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和歌山さんぽみちプロジェクト

西条藩を知る(5)郷土博物館「隅切り葵」など展示

 前号では、かつて西条陣屋の北御門として使用され、版籍奉還後は所在を転々としていた歴史的な建造物を郷土の財産として後世へ残そうとする、郷土愛にあふれる市民の活動を取り上げた。今週は北御門と大手門の傍に建つ「西条郷土博物館」を紹介したい。
 西条郷土博物館は西条陣屋の跡地に位置する。館内には西条藩に関する歴史的な資料をはじめ、300年以上続く御当地の祭事「西条まつり」のだんじり(屋台)や、みこしにあしらわれた彫刻の紹介、かつては国内最大級といわれ、輝安鉱(きあんこう)という鉱石(アンチモン)を多く採掘した市之川(いちのかわ)鉱山の歴史と鉱石の現物の展示など、盛りだくさんの内容。
 他にも、西条市を中心に活躍した児童文学家の展示や、商店街に残る懐かしの品々を集めた商業遺産展など、期間限定の企画は、地域密着型で面白い。
 紀州徳川家の分家として当地を治めた西条松平家が使用していた隅切り葵の展示もある。御三家(紀伊、尾張、水戸)は三葉葵が、葵の御紋としてなじみ深いものであるが、分家においては輪郭を施す決まりとなっており本家と区別。ここでは、輪郭の四隅を切った隅切り葵として紹介されている。
 毎年10月中旬に開催される「西条まつり」は西条市の無形民俗文化財に指定。伊予西条藩4代藩主の松平頼邑(よりさと)は、宝暦元年(1751)に屋台の総代につき、「祭事中は身分に関わらず裃の着用や小脇差を挿すことを申し出により許可する」という触書を出すなど、地域一体となった祭事として親しまれ、現代に受け継がれている。
(次田尚弘/西条市)